この公聴会から3日後の2月14日(土曜)、司法省はエプスタイン・ファイルにある「重要な公的立場にある人物」数百人の名前のリストを議会に提出した。ただし各人がエプスタインとどのように、どれほどの関連があったかは示されていない。ファイル公開を超党派で推し進めてきたロー・カンナ下院議員(民主党)、トーマス・マッシー下院議員(共和党)は「誰が捕食者か」を意図的に曖昧にしていると怒りを露わにした。
強い批判を招くであろう政府発表が、メディア対応を行わなくて済む週末に行われるのは、ままあることだ。
「ファイルに名のない権力者は負け犬」
2026年2月初頭、イギリスのポッドキャストにアンドルー元王子(※)(現アンドルー・マウントバッテン=ウィンザー)の、かつての恋人レディ・ヴィクトリア・ハーヴェイがゲスト出演した。レディ・ヴィクトリアは英国貴族の第6代ブリストル侯爵の娘で、その奔放な言動により英国社交界ではよく知られた存在だ。
※アンドルー元王子:チャールズ現国王の弟で、ジェフリー・エプスタインと親交があった。少女への性的虐待疑惑を受けて、2025年10月に「王子」の称号を剥奪されている。2026年2月19日に公務での不正行為容疑で逮捕され、釈放後も捜査を受けていると英BBCが報道。
レディ・ヴィクトリアは「エプスタイン・ファイルに名前があること」について、以下のように語った。
「エプスタインは大きな権力を持つ人のことなら、誰でも知っていた」
「だから、もしあなたが権力者であったとしても、ファイルに載っていないなら屈辱ね」
さらに「ただの負け犬よ」と付け加えた。
番組ホストが「負け犬?」と聞き返すと、レディ・ヴィクトリアは笑いながら「そうよ!」と答えた。「あなたの名もエプスタイン・ファイルにあるのですか?」と聞かれると、「もちろん」と頷いた。
レディ・ヴィクトリアにはサバイバーへの同情も共感も、エプスタインと、かつての恋人アンドルーを含む取り巻きの行動を誤りだとする倫理観もない。これがエプスタインを中心に形成された「権力者」たちの邪悪で強大なネットワークの実態なのだろう。
エプスタイン事件にアメリカ人が戦慄する理由
政界、財界、学界、美術界、エンターテインメントおよびスポーツ界……と分野を問わず、パワーを持つ者たちがエプスタインとの繋がりを求めた。ある者は少女たちへの残酷な性的虐待を楽しみ、ある者は自身の成功のためにエプスタインの持つ人脈と莫大な資金に目が眩んだ。ある者は、その両方を“享受”したのだろう。
自己中心的で、冷酷で残酷、かつエリートの閉鎖性を物語っている。そんな彼らは他者をコントロールする立場にあった。そうした者たちを思うがままにコントロールしていたのが、ジェフリー・エプスタインなのだ。
ファイルに名のあった者たちは倫理観を持たなかった。多くのアメリカ人は、権力を持つ者たちのそうした倫理観の完全な欠落に戦慄した。アメリカは、欧米は、高等な文明社会であり、キリスト教に基づく倫理観や博愛主義があり、ゆえに世界をリードしてきたと信じてきた、その自負が崩れ去ったのだ。


