――薬はずっと飲んでいたんですか。
姫さん はい。大きな発作はなかったけど、まだまだ不安と生きていました。特に不安が強くなるのは、自分が安心できる場所から出る時ですね。ただ、やっぱりもう少し行動範囲を広げたいという気持ちがありました。外に1人で行けるようになりたい、いろんな世界を私も見たい。
そこで、朝や日中など、外に人がいないタイミングで自宅マンションの周りを1周することから始めました。1周といっても3分ぐらいです。薬と水の入ったペットボトルを握りしめて、そして何かあった時用に携帯を持って。それを毎日、続けました。
――少しずつ、外に出るトレーニングを始めたんですね。
殿ちんさん 発作が出ないギリギリはどこなのかを、一緒にトライして確認する生活でしたね。電車ならまず1駅乗って、大丈夫そうかなと思ったらもう1駅乗ってみる。ちょっとずつできることが増えるのが僕も嬉しかったですね。
――加点方式ですね。減点方式じゃなくて。
姫さん 夫はスーパーポジティブなんです。
殿ちんさん でも、妻もサプライズでプレゼントをくれたりするんですよ。
姫さん プレゼントは自分のお金で買いたい。だから、絶対に何かしら働いていたいんです。プレゼントといっても、商店街の古いおもちゃ屋さんで買った、ちょっとしたものですけどね。
嫌で嫌で仕方がなかった「金髪」
――髪を、黒ではない色に染めるようになったのはいつからですか?
姫さん 42歳頃です。それまでは美容院で月に1回黒く染めてもらっていたんですけど、長年の薬剤で頭皮はボロボロだし、顔の皮膚もただれるようになっていて。新しく生えてくる毛も白髪だったので、美容師さんに相談して、染めていた部分を切ってブリーチして、金髪にチャレンジしました。
――金髪にしたのは、初めてでしたか。
姫さん 初めてです。高校生時代もどちらかというと真面目な方でしたし、カラーもブリーチもしたことがなかったので、この時、髪の毛の色を初めて変えました。
ただしあくまでも白髪を隠すためという目的であって、好きで金髪にしたわけじゃない。暗い茶色のような黒に近い色ならまだしも、金は派手すぎたし、見慣れない自分は違和感で、本当に嫌でした。白髪染めも絶望でしたが、金髪も金髪で、もうずっとこれを繰り返すのかと暗澹たる気持ちになりました。

