10年間の沈黙…きっかけは「同期の死」だった

松田 「社会の構造を知るには、記者が一番適している」と思った私は記者職を志し、2012年に時事通信社に就職したんです。

——その後、2021年に『防大女子-究極の男性組織に飛び込んだ女性たち-』を出版されています。

松田 防大の女子学生の悩みの構造を明らかにして、同じように悩む人の力になりたいという気持ちは学生時代からずっとありました。

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 でも、私は防大しか出ていなくて、実際の部隊を知りませんし、自衛隊に関することを発信すると叩かれるのはわかっていました。だから、記者職に就いてからも、うじうじと10年間何もできなかったんです。

撮影=橋本篤/文藝春秋

——なぜ出版を決意できたんですか。

松田 正直、何事もなければ、自衛隊に関する発信はしなかったと思います。でも、私の防大時代の大切な友人で、任官して7年の女性の同期が2018年に自ら命を絶つという出来事がありました。彼女より優しい子は私の周りにはいないと思うほど、他人を思いやることができる子でした。

 確固とした理由はわかりません。いまでも「何かできることはなかったのか」と思うこともあります。

 ただそのときに、一人でも「あなたのおかげで楽になった」と言ってくれる自衛官がいるならば、行動しようと決めました。

同期同士の絆は固い(本人提供)

——発信した結果、不本意な意見が寄せられることもありましたか。

松田 ネットで発信すると、どの記事にも「税金泥棒」というコメントは寄せられます。私に対する嫌悪感が理由で記事を読んでもらえないのであれば残念ですが、一方で、そういう意見はあって然るべきだとも思います。防大生を育てるために多額の税金が投入されていますから。

 防衛医大には任官を拒否すると学費を返還する義務が生じますが、防大にはそれもない。ですから、私には負い目があります。それは生涯持ち続けることでしょう。

 何とか国に恩返しするために、いまの私にできることは自衛隊の現状を伝えることだと考えています。