このように、ホリプロは自社の所属俳優でコンテンツに投資し、IP(著作権)ビジネスに参入しようとしている。この布石は長年、通称「ハリポタ」の舞台で培ってきたものだ。

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」は、総観客数130万人を突破し、通算1300回公演を達成した超ロングラン舞台である。2022年の開幕から4年半にわたりTBS赤坂ACTシアターを満席にし続け、赤坂の街全体を“ハリポタの聖地”へと変貌させ、ビジネス面でも稀有な成功例となった。

今クールのドラマで顕著に

以上に述べてきたような動きは、芸能界が新しい時代に突入したことを示唆している。同じような流れは、今クールのほかのドラマにも顕著に表れている。なかでも私が注視しているのは、大手芸能プロ・研音の動きだ。

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日テレ水10「冬のなんかさ、春のなんかね」は、主演が杉咲花。同時間帯のフジ水10「ラムネモンキー」は、トリプル主演で反町隆史、大森南朋、津田健次郎が務めている。これは、研音所属の若手俳優・杉咲と大御所俳優・反町を“真裏”に配置して競合させている構図である。

このパターンもこれまでは「タブー」とされ、あり得なかった。「視聴率を食い合う」と避けてきたからだ。しかし、かつてのように地上波において高視聴率が望めなくなり、それによって視聴率は「二の次」の存在になった。では、その代わりに芸能プロは何を“取りに行く”ようになったのか。その答えこそが、本論の核心である。

「配信」に照準を合わせた戦略

読者のなかには、この現象を見て「テレビ局に対する事務所の力が、昔ほど強くなくなったからではないか」と考える人もいるだろう。

しかし、それは早計である。これを許している、いや「あえてやっている」のは、芸能プロのほうだ。そしてそこには、研音の社長・冨田賢太郎の“俳優ブランドを主軸に据える”という戦略が明確に打ち出されている。

ホリプロが「作品(コンテンツ)」を資産とするのに対し、研音はあくまで「タレント(人間)」を“価値の源泉”とみなす投資スタイルを採っている。天海祐希や反町隆史といった「主役級の俳優」のマネジメントに特化し、舞台そのものを製作するよりは、外部の有力な製作(映画、舞台、テレビなど)にタレントを送り込むことで、自らのブランド価値を維持・向上させている。