もう1つは、ホリプロが自前の制作部門を持っていること。

菅井自身、多くのタレントや俳優のマネージャーを務め、叩き上げで制作現場を経験してきた人物で、ドラマ制作部門を長年率いてきた。自社で制作すれば著作権が確保できることを知り尽くしている。

自社タレント、自社資金、自社作品の循環

再上映や配信に展開するたびに収益が積み上がる構造を作れる点は、極めて現実的かつ堅実だ。自社のタレントを起用し、自社で資金を投じ、自社で作品を持つ。その循環を回せるのがホリプロの強みなのである。

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しかし、私が最も注目しているのは、菅井のマネジメント的な手腕だ。

本シリーズは製作委員会方式に、BS日本と日本映画放送の“共同出資スキーム”を組み合わせた複合型の制作体制である。報道によれば、幹事と制作・配給を担うのはホリプロだが、共同配給には、全国に約100館のイオンシネマを持つ映画館チェーンが入り、二次利用(放送権やパッケージ販売)は専門会社・ミツウロコが担当する。配給・回収・権利運用まで“出口を先に設計した”手堅い体制を、菅井が主導して組み上げた。

この企画の本質は、単なる「2時間サスペンスの映画化」ではない。むしろ、映画館という空間を、もう一度「安心して身を委ねられる物語」を体験する場として“再定義する”試みだと私は見ている。配信ではなく、テレビでもなく、わざわざ足を運んで観る2時間サスペンス。内容はある程度想像がつく。だが、その予定調和を楽しみに行く観客は確実に存在する。

「視聴率」だけを追わない

地上波では「コア視聴率が取れない」と切り捨てられてきた層が、映画館ビジネスにおいては、時間とお金を持つ優良な観客層に転じる可能性もある。平日昼間の上映を埋められるコンテンツとしても、映画館側にとって無視できない存在になるかもしれない。要は、地上波では“編成上の理由で切り捨てられたジャンル”を、別の器(映画や配信)で再生させ、観客を回収しようとする発想だ。