では、なぜ彼らは、かつては「タブー」とされたやり方を変えたのか。そこに、大手芸能プロのしたたかな戦略と思惑がある。
答えは、「配信」という大きな目的に照準を合わせるためである。
彼らは、地上波を「俳優のステータス確立と顔を売るための宣伝媒体」と割り切っている。俳優自身にとっては「主役を張れる」ことが大きなステータスであり、同時に芸能プロにとっては「裏被り」するほど“キャストの厚み”を示すアピールにもなる。そんな“便利な”場に、地上波テレビはなり下がったのだ。
地上波で主役歴を刻み、配信で回遊を回収する
そしてこの流れは、配信サイドにとっては、まさに追い風だ。
地上波で“毎週観る習慣”を焼きつけた俳優は、配信プラットフォームにとって最も回収効率の高い“戦略資源”へと変わる。テレビで獲得した認知と信頼を、配信の作品ラインナップへそのまま滑らかに移行させる。――この新しい「循環」こそが、現在のドラマキャスティングに見られる、一見“いびつな”配置の“裏側”にある真実だ。
だが、芸能プロが「視聴率」の代わりに取りに行っているのは、作品単体のPVではない。PVは再生数が積み上がるだけで、完走率にも回遊にもつながりにくい。勝敗を決めるのは、「俳優×ジャンル」の掛け合わせで、視聴者の“棚”をどれだけ広く、深く押さえられるかだ。
ここでいう“棚”とは、「この俳優が出るなら観る」という視聴者の指名視聴=嗜好のことである。その“棚”を最初に作る装置が“地上波”であり、その棚を回収する装置が“配信”というわけだ。
地上波で主役歴を刻み、配信で回遊を回収する――この二つが一本の経路で結ばれた結果、キャスティングは“作品を選ぶ”行為ではなく、俳優の動線そのものを設計する作業へと変わった。
この構造変化は、俳優自身の動きにも現れ始めている。その象徴が、山田孝之が立ち上げた「THE OPEN CALL」である。俳優が自ら企画を主導し、配信(Lemino)でプロセス自体を公開しながら、主演・脚本・制作に踏み込むこの取り組みは、俳優が“流通される側”から“流通を設計する側”へと移り始めた新しい時代の兆しだ。俳優の存在は、作品の部品ではなく、配信が生み出す経済の“核”へと変わりつつある。