コントリビュート文化で劇的な変化が起こる

 サティアがトップになった途端、その壁が壊されて、すぐにその製品はリリースされました。組織をフラットにして、部門間の連携を促した結果です。

 サティア自身がエンジニア出身で、テクノロジーへの理解があったこと。そして何より、数字ではなく「コントリビュート(貢献)文化」を重視したことで、社内の雰囲気が魔法のように劇的に変わりましたね。

牛尾 僕が入ってからのマイクロソフトでは、本当にいい人ばかりに恵まれてきました。他人の足を引っ張るような人はいないし、みんな進んで助けてくれる。評価制度に「他者への貢献」が組み込まれている文化によるところも大きいんでしょう。

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 僕にとってマイクロソフトでGiverといえば、真っ先に澤さんの名前が思い浮かぶんですよ。お世辞でもなんでもなくて。

牛尾剛氏

 えっ、どうして?

牛尾 僕がプレゼンの練習をしていたとき、澤さんは夜中の12時過ぎまでレビューに付き合ってくれたことがありましたよね。当時、僕は別部署の平社員で、澤さんは雲の上のような人。澤さんには何の得もなかったはずなのに、お願いしたら「いいですよ」と快諾してくれた。まさに無償のGiverでした。

 アハハハ、そんなこともありましたね。よく「なぜそんなに人に与えるんですか?」と聞かれますが、実はあまり深く考えていないんですよ。「気が向いたから」というのが正直なところです。

牛尾 そこがすごい。

 でも、これが重要なんです。気が向かないミーティングには行かないし、気が向かない飲み会も断っています。自分を騙して「義理があるから」と動いても、まずいい結果にはなりませんから。自分の直感を信じて、ポジティブなエネルギーが湧く相手にだけ、全力でギブする。

牛尾 無理に全員に与える必要はない、ということですね。

澤 そうです。見返りは期待せず、自分が心地よくギブできる相手を選ぶ。結果的に、振り返ってみたら「あ、あの時のギブがこんな形で返ってきたな」となる。それがGiverの好循環だと思います。

わずかでも平等性が乱されると怒る国民性

牛尾 なるほど。そういうGiver文化ってまだまだ日本には浸透していないですよね。

 実は、日本企業の閉塞感の原因の一つに、僕はマッチャー(=損得で動く人)気質があると思っています。

澤円氏

牛尾 どういうことでしょう?

 例えば、イベントなどの満足度アンケート。アメリカ人は基本的に満点の「5つ星」からスタートします。よほど悪くなければ最高点をつける。でも、日本人は「3つ星」が基本。普通なら3、良ければ4。最初から満点なんて与えない(笑)。

牛尾 確かに。日本ではベースが3点で、何かしてくれたら1点加点してあげよう、というスタンスですね。