他人に貢献している人って結局は得している

 「ソースコードは会社の資産であり、外に出すなんてとんでもない」とか、「他人に取られたらどうするんだ」という声があちこちで上がっていました。テクノロジーはそうやって叡智を共有してみんなで作り上げていくものだという視点が、当時の日本企業にはごそっと抜け落ちていたんです。

牛尾 GitHubが登場した頃はそんな空気でしたよね。でもつくづく思うのが、他人にコントリビュートしている人って結局は得している。別にそれを狙っているわけではないけれど、澤さんの著書にも書いてあったように「サードドアが開く」。成功への抜け道みたいな機会が開かれて、突然有名になったり、大きなチャンスを掴んだりしているんですね。

 そういうものだと思います。楽しんで他者に貢献していると、ふと振り返ったときに、あれ?結構得したかもなということが人生で増えてくるもの。

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 僕はある量子力学関連の審査員もやっているのですが、量子の世界には「観測した瞬間に状態が確定する」という特徴があります。見るまでは確定していなくて見た瞬間に決まる。

「Giverであること」もこれに近いと思うんです。無意識に他者のために動いているときは純粋なGiverですが、意識しすぎると違うものに、時としてマッチャー的なものに変容しかねない。だから、「Giverになろう」とことさら意識せずに、ふわっと気が向いたときに、他者に対して何か与えることを習慣にしていくといい。そんな文化が日本企業にもっと根付いてほしいと願っています。

牛尾 今日は澤さんの「Giver歴」の長さを感じる濃密なお話でした。

 こちらこそ、ありがとうございました。

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