ワクチンと不妊とを結びつけ、疑似医学界のインフルエンサーに

 早い段階から、ウルフがコロナ関連の誤情報の執拗な発信源として登場したことが、現実世界で成果を生んでいるのは明らかだった。ウルフは自分のウェブサイトであるデイリークラウト(DailyClout)や共和党が強い州の議員たちとの新たな連携を通して、共和党が強いいくつかの州でマスク着用やワクチンパスポートの義務化を禁止する法律が通ったのは、自分の力による部分が大きいと主張した。

 わがドッペルゲンガーは自らの影響力を誇張する傾向が強い。だが実際には、あらゆるプラットフォームやSNSのツール上で、何千万という人びとに向けて多数の言語で情報を発信しているグローバルな騒音のなかのひとつの声にすぎない。

 とはいうものの、このグローバルネットワークのなかで、ほんの数人の個人が――コロナ禍以前の知名度やSNSのスキル、そしてがむしゃらな活動と押しの強さによって――等身大以上の役割を演じてきた。出発点はコロナにあったものの、彼らはその後急速に「独裁政治」を導くとされるあらゆる他の策略へと関心を移してきている。

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 ウルフはそうした個人の1人であり、とりわけ彼女を最初に国際的に有名にした集団――すなわち女性――をターゲットにした医学関連の誤情報を精力的に拡散している。急速に増えつつあるフォロワーにシェアされて幅広く拡散したあるコロナ関連のツイートで、彼女はこう書いている。

「何百人もの女性が……ワクチン接種後に出血したり血の塊ができたりし、ワクチンを接種した女性の近くにいると不正出血が起きると言っている」

画像はイメージ ©show999/イメージマート

 ワクチンと不妊とを結びつけるネット神話は、女性の健康をテーマにしたオンライン世界ではとりわけ有害な影響を及ぼした。

「子宮の健康に情熱を注いでいる」と自称する1人の女性のインフルエンサーは彼女のフォロワーに、「注射」した人のそばには近づかないようにと警告。フロリダ州の少なくともひとつの私立学校では、生徒をワクチンの「シェディング(排出)」から守るために、接種した教師が教室に入ることを禁じる方針を出した。

 NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)が専門のデータアナリストの協力を得て行った調査では、これらの誤情報のかなりの部分の出所は「いわゆる疑似医学界におけるきわめて信奉者の多いインフルエンサー」であることを突きとめた――ナオミ・ウルフである。

 あるいは――少々そそっかしい人にとっては――ナオミ・クラインだ。

コロナ関連の陰謀論インフルエンサーと混同されるリスク

 コロナ禍の最中のもう1人のナオミによる怒濤のような活動によって、彼女と混同されることをめぐるリスクは、マンハッタンの女子トイレで取り違えられたときに比べて格段に増大した。彼女はコロナ以前にも根拠のない陰謀論の分野に足を踏み入れ、しばしばけんか腰になったり、誰かをスパイだのクライシスアクター〔噓の被害を演じる者〕だのとほのめかしては、その人を傷つけたことは疑いない。だがそれによって、多数の人びとを直接的な危険に陥れたことはなかった。

 だがコロナ禍以降、事情は一変した。「ワクチンのシェディング」という悪名高いつくり話についていえば、彼女がなぜあれほどまでの影響力をもったのかは容易に理解できる。ワクチン接種者が危険な粒子を放出して未接種者に害を及ぼすという説が拡散しはじめたのは、多くの人がワクチンの有効性を信用すべきかどうかを見きわめようとしている、まさにその時期だった。