イチローが「劇的タイムリー」を打つ中、ブルペンで起こっていたこと

 それは抑えを外れた(藤川)球児のことでした。決勝ラウンド、ダルが抑えに回ることになって、球児は本来の仕事ができなくなってしまいました。僕は決勝で投げる予定がなかったので、日本が1点リードした9回、球児のことが気になってブルペンへ行ったんです。

 あのときは抑えに出たダルが同点タイムリーを打たれて延長へ……その直後にイチローさんが球史に残る勝ち越しタイムリーを打ちました。僕、たぶんあのタイムリーはブルペンで見ていたんです。ダルが出て行ったとき、球児、ここで投げたいだろうなと心配になって、声をかけたくなりました。

抑えの座をダルビッシュに譲っていた藤川球児 ©文藝春秋

 どのタイミングでブルペンに行ったのかは覚えていないんですが、ベンチでスギと「球児、大丈夫かな」と話していて、居ても立ってもいられなくなって裏の動線でブルペンへ行きました。

ADVERTISEMENT

 僕、何も言わずに球児の後ろから肩に腕を回したことを覚えています。そうしたら球児はわかってるよ、納得してるから大丈夫、みたいなことを言っていました。それどころか、球児は慣れない抑え役をやっていたダルのことを気遣っていたんです。僕もマウンドで苦しんでいたダルのことを球児と一緒に応援した記憶があります。第2回のWBCには連覇した喜びとともに、そんな切ない思い出がたくさんありました。

松坂大輔 怪物秘録

石田 雄太

文藝春秋

2025年7月25日 発売

最初から記事を読む 「お前が来たら絶対に甲子園じゃん」中3だった松坂大輔が志望していた、横浜高校でも東海大相模でもない“憧れの高校”