一昨日、羽田空港に到着して以来、およそ38時間ぶりに外へ出た。ドーハらしいスタイリッシュな建物を横目に、バスに乗せられ揺られていく。窓から見た朝焼けは、こんな非常事態でも美しかった。

空港からホテルへ向かうバスの車窓から撮った風景 ©文藝春秋

ドーーン!と爆撃音が

 バスを降り、受け入れ先のホテルに向かうと、すでに入口には長蛇の列ができていた。どんどん横入りされながら45分以上並ぶと、やっとフロントのカウンターが見えてきた。

「Room is full. Sorry.」

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 ホテルスタッフからアナウンスがあった。待機列に並ぶ人たちと一緒にガックリ肩を落としたが、何百人もの人がいるのだから仕方がない。「宿泊先が決まるまでどうぞ」とレストランに案内された。ようやくパンでも食べようか、と腰を下ろしたところだった。

大混雑するホテルロビー ©文藝春秋

 ドーーン。

 どこからか爆撃音が聞こえた。地震より短いが、ホテル中が震えるような音だった。周囲にいた人たちと窓に駆け寄ると、5、6匹の鳥が一斉に内陸のほうへ飛んでいくのが見えた。

「Evacuate underground!(地下に避難を!)」

 ベテランのスタッフがレストランの入口で叫んでいる。言われるがまま、その場にいた100人以上の人々が、荷物を抱えて移動していく。

 ロビーのエレベーター横にある小さな白いドアを越えると、地下へ地下へと続く白い非常階段があった。爆破などでこんなに小さい入り口がふさがれたら、出てこられるのだろうか。怖い、と躊躇するより前に、後ろにいる大勢の足音で、歩みを止めることはできなかった。

 急いで駆け下りようとすると、目の前に小さめのスーツケースを重そうに抱えるファミリーが見えた。「急いで!」と逸る気持ちが抑えられない。1階、2階……やっとのことで3フロア下がると、そこには予想より広いエリアが広がっていた。30平方メートルほどあるエレベーターホールには、先に到着した人たちが壁を背に窮屈そうに座っている。廊下に並ぶ20脚ほどの椅子はもちろん満席で、そのドアの先には、ムワっと蒸し暑い駐車場があった。最終的に、150人ほどいただろうか。私はエレベーターホールへ戻り、近くにいた10名ほどの日本人たちと一緒に、円陣を組むように地面に座った。先の見えない中での籠城が始まった。

 午前8時過ぎ、ホテルスタッフが水を配布してくれた。水や食べ物は手元にあるものの、スマホの充電がなくなるのが一番恐ろしかった。壁の隅にあるわずかなコンセントを奪い合い、充電しながら、私は状況をメモするため紙のノートにペンを走らせた。空港でもらったブランケットを敷き、肩を寄せ合いながら、状況が変わるのを待つ。

地下3階のシェルターで待つ人々の様子 ©文藝春秋

 光がシャットアウトされているため時間の経過が分からない。少し経ってスマホを見ると、ドーハのハマド国際空港に残っていた日本人も避難を始めた、と連絡があった。Xでは、数時間前に隣国UAE(アラブ首長国連邦)のドバイ国際空港が爆撃に遭い、「アジア国籍の1人が死亡、7人が負傷したことを確認した」という投稿が流れてきた。