ニデック本社は「当社の会計監査人であるPwC京都監査法人も分配可能額の超過を、見落としにより、指摘できていなかった」とあたかも監査法人のミスであるかのように発表した。しかし、配当は取締役会の決議を経て行われるもので、故意ではなくとも会社の資産を不適切に流出させた一義的責任は取締役会にある。また、分配可能額は監査対象ではない。
不適切配当については外部調査委員会も設立され、報告書では「経理部で退職などによる担当者の交代が頻繁に起こっていた」ことなどが原因で、チェック体制が不十分だったことが指摘されている。
たしかに、ニデックでは22年以降、社員が大量に退職していることが報じられている。筆者も同社関係者から「暗に土日出勤を求められる社風を嫌って辞める社員がいるし、採用内定者の辞退も増えている」と聞いたことがある。
ある元役員は、ニデックの社内風土についてこう語る。
「私は他社からの転職組ですが、ニデックでは休み明けの月曜の朝に、幹部社員が疲れて見えるのが不思議でした。ある幹部に理由を聞くと、『土日は顧客からの連絡がないので、仕事がはかどるため、深夜まで仕事をしている』と答えたので、驚きました」
翌期の売上を先食い計上
また、ニデックは24年5月24日、同年3月期決算と23年3月期決算で売上高や利益を過大計上していたと発表している。23年3月期では売上高で約128億円、営業利益で約101億円を過大計上していたのだ。原因は事務処理のミスによるものだが、投資家が判断材料とする重要な数字を大きく間違えること自体、単なるミスでは済まされないだろう。
21年頃、筆者は元中堅幹部からこんな話を聞いたことがある。
「ニデックでは決算間近に売上が足りないと、翌期の売上を先食いして計上するために『赤伝票』を発行し、翌期に入ると、その売上を元に戻す『青伝票』を発行していたことがある」
それが事実だとすれば、明らかに粉飾決算だ。ニデック広報にこの点を確認すると、「第三者委員会による調査事項となりますため、回答は控えさせていただきます」との返答だった。
※約6800字の全文では、会計不正の背景を掘り下げています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(井上久男「ニデック永守代表の落日」)。
出典元
【文藝春秋 目次】前駐中国大使が渾身の緊急提言! 高市総理の対中戦略「3つの処方箋」/霞が関名鑑 高市首相を支える60人/僕の、わたしの オヤジとおふくろ
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