ロウリュの質を決める「サウナ設計」の技術
さらにロウリュの軌道・速度・質感、呼吸のしやすさ(深い呼吸を助ける新鮮な空気をいかにロウリュとともに循環させるか)も、正しい知識と経験があれば調整が自在になる。設計上は、ストーブの容積や吸排気口の位置、ベンチの高さひとつでコンディションが劇的に変わるし、入浴者自身の水のかけ方によっても、ロウリュの肌心地は千差万別だ。物心ついた頃から親に倣って水かけを始めるフィンランド人は、まさにそれを巧みにコントロールする素養をもっているので驚かされる。
今日の世界各地のサウナでは、アウフグースと呼ばれるタオル回しのパフォーマンスや、蒸気に香りづけするフレグランスアロマ、退屈しのぎ用のテレビの設置など、さまざまなエンタメ趣向が入浴時間を演出する。けれど、フィンランド人はそれら一切にまったく興味がなくて、現代でも、ただ焼け石から出るロウリュへとストイックに身を委ねる。入浴中、数十秒に一回は水をかけて全身でロウリュを味わい、その心地よさを、同伴者や周りの客たちと延々品評し合って満足しているのだ。
フィンランド人のロウリュに対する執着や職人気質は、日本人が米と水と炊き方だけで極みを目指す「白米へのこだわり」に近いなと、私は常々感じている。米の品種や吸水時間や炊飯釜の違いからくるご飯の味の違いなんて、ほとんどの外国人には理解できるわけがない。ロウリュもまた同じだろう。華やわかりやすさはなくとも、そこには歴史が宿り、つくり手のこだわりが宿り、人々の心身を元気づける滋養が宿る。ジャンルは違えど、この美学に共鳴する日本人ならきっと、フィンランド・サウナならではの滋味深い心地よさを、他のどの国民よりも深く分かち合えるのではないかと思っている。
フィンランド・サウナ旅のアドバイス
・旅行者向けには、ホテルの宿泊客用サウナ、公衆サウナ、貸し切りサウナがある。手軽にローカルの雰囲気が味わえるのは公衆サウナ。ただし、公衆サウナは都市部の文化なので、小規模な地方都市や田舎地方では珍しい。首都ヘルシンキと世界サウナ首都タンペレが、バラエティと密集度で圧倒的。
・公衆サウナでは、店舗によって男女別裸入浴か水着混浴のどちらか。タオルは持参が基本で、有料レンタルはかなり割高。ロウリュのかけ方は店ごとの流儀があるので、常連さんを観察し、彼らに手ほどきを受けるのがベター。ロウリュする際は、他の客に一声かけるのも忘れずに。
・貸し切りサウナは、プライベート感に加え、立地や質からも体験価値は高い。概して行きづらい場所にあり、しかも人を集めないと割高になるので、団体ツアーに参加するのも手だ。
