本場フィンランドのサウナ愛好家たちを引き連れた「日本浴場ツアー」。大阪、名古屋での熱狂を経て、一行は京都エリアのさらにディープな温浴体験へと足を踏み入れた。
大自然の古民家サウナから、芸術的な装飾が施されたレトロ銭湯まで。サウナ大国のマニアたちが「世界のどこにもない総合体験」と絶賛した、日本のお風呂文化の奥深さとは。こばやしあやな氏の著書『世界浴場見聞録』(学芸出版社)より一部を抜粋して紹介する。
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DAY4&5 京丹後の暮らしに寄り添う、酵素風呂と古民家サウナ
朝湯もしっかり堪能してから城崎温泉街を発ち、貸し切りバスで一路東へ。道中、古代神話の息づく寺社仏閣や天橋立に立ち寄りつつ、一行は京都府最北端の京丹後市にやって来た。
京丹後市には、2022年にユニークなサウナ施設が相次いで生まれ、愛好家が遠路はるばる足を伸ばす。1軒目は、酵素風呂と在日フィンランド人が監修したサウナが同じ屋根の下で楽しめるぬかとゆげ。「ぬか」は酵素風呂の温床となる米ぬか、「ゆげ」はサウナの蒸気の象徴だ。
この一風変わった温浴施設の運営者が、両温浴法の健康効果に一目置く、地元で信頼の厚い形成外科医だというのが興味深い。近年は酵素風呂の身体反応への影響を検証し、その成果を学術論文としても発表している。定期的な入浴(入酵)が、末梢循環の血流促進や睡眠の質の改善などをもたらす(*1)ことが、すでに実証されているそうだ。
*1 「酵素風呂への入酵は ヒトの身体にどのような反応を引き起こすのか?」吉岡 直樹・藤井 廉・中村 太地・立石 貴樹・田中 慎一郎『The Japanese Journal of Sauna』 vol.1、 日本サウナ学会、2024年
酵素風呂の原理をフィンランド人にわかってもらうのは苦労したが、それも百聞は一見にしかずだ。地元産のきめ細やかな米ぬかが開墾畑のように盛られた「浴室」では、少し足を踏み入れるだけで強かな温もりが足裏に伝わる。これが、中で生息する微生物が米ぬかの有機物を分解しながら放つ熱エネルギーなんだよと教えると、「誰が最初にその中で入浴しようなんて思いついたの!?」と誰もが呆気にとられていた。そんなの、私だって知りたい。