唐突ながら、私は無類の発酵オタクでもある。フィンランドの自宅では、近隣の有機農家のライ麦やオーツ麦で麦麹を自作し、味噌どころか醤油もみりんもすべて自家醸造している。数日間に及ぶ麹菌の培養作業中、麦粒が徐々に熱を帯びてきたら、麹菌が酵素を分泌しながら代謝活動を行なって、元気に増殖している証なので嬉しくなる。そんな愛おしい微生物たちの生命エネルギーに自分の身体を温めてもらえるなんて、ニヤけが止まらない。

微生物の発酵熱で温まった米ぬかに体を埋めてもらう 撮影:こばやしあやな

 微生物の発酵熱だけで、ぬかの温度は60度台まで上昇するそうだ。しっかり全身を埋めてもらうと、数分後には顔面に汗が伝い始め、やがて身体の芯や末梢までぽかぽかに温もる。お腹にずっしり載ったぬかから、臓器へと熱を受容するのが特に気持ちいい。フィンランド人たちも、新感覚温浴中は良い顔だった。入浴後に貸与される京丹後ちりめんの湯浴み着も、柔和な肌心地が皆に衝撃を与え、自宅サウナのために購入する人もいた。

古民家で自然との一体感を楽しむ薪サウナ

 もう1軒のサウナ施設が、京丹後市郊外の村落にある古民家を改築して生まれた蒸 ―五箇サウナ―だ。森と湖の国から来たフィンランド人たちの郷愁を誘う、平穏な里山と田園風景の広がる集落には、現在わずか14世帯30名が暮らす。この地に地域おこし協力隊の制度を利用し移住した若者が、村人から譲り受けた築百年超えの古民家の一角を薪ストーブで温めるサウナ室に改修し、村人と遠方客の両方を集わせ始めた。

ADVERTISEMENT

 古民家の前をたゆたう浅瀬の清流は、本国でも馴染み深い「天然の水風呂」だ。薪サウナで火照った身体で入水すれば、得も言えぬ快感に誘われる。日本のサウナ浴で水風呂が礼賛される理由は、その冷刺激だけでなく、全国の河川や地下水の水質の良さを全身で味わう悦びが大きい。本来のフィンランド・サウナも、自然との一体感を楽しむ営みなので、彼らが「ととのう」という感覚を知らずとも、深いシンパシーを感じながら自然体で楽しんでいるのが見てとれた。

五右衛門風呂にもチャレンジ 撮影:こばやしあやな

 また、オーナーが温めてくれた五右衛門風呂も好評で、夜は囲炉裏で地の食材をたくさんいただき、温浴を通じた日本の自然との対話に皆すっかりご満悦だった。