空前のサウナブームに沸く日本。かつては珍しかった熱波師による華やかな「アウフグース」のショーも、いまや各地で当たり前に見られる光景になった。

 しかし、サウナの本場・フィンランドの人々は、そうしたエンタメ要素には一切興味がないという。彼らがストイックなまでに執着するのは、熱した石に水をかけて発生させる蒸気、「ロウリュ」の質ただ一点のみだ。

 人口550万人に対してサウナが300万個以上あるという“サウナ大国”は、どのようにしてその文化を育んできたのか。 1万年前から続くサウナの歴史と、彼らの異常な情熱について、こばやしあやな氏による『世界浴場見聞録』(世界浴場見聞録)より抜粋して紹介する。

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フィンランド・サウナ史=サウナストーブ進化論

 サウナの原型は、諸説あるがおよそ1万年前、氷河期後の石器時代から存在したらしい。

 元祖は地面に穴を掘って動物の皮や丸太で覆っただけの簡易空間で、穴底に石を置いて熱し、水をかけて蒸気を発生させた。青銅器時代(紀元前1500~900年頃)には屋根の隙間が樹皮や泥炭で塞がれて、より密閉度の高い空間になっていく。

 単なる「空間」から「建築」へと進化したのは、建造技術が向上した鉄器時代(紀元前500年頃以降)のことだ。木材が建材として使われ始め、屋根には換気用の突起が取り付けられた。このユニットが、サウナの祖父「スモークサウナ」の原型となる。

 スモークサウナとは、排煙設備のないストーブに薪をくべ、直火で石を熱するサウナ室(多くは独立した小屋)のことだ。排煙設備がないといっても、壁に小窓はあるし、もちろん扉もあるし、天井にも煙を逃す簡易孔くらいはある。それでも、石を熱するために薪をくべる間は、人体に有害な煤煙が室内に充満してしまう。つまり今日の薪ストーブ式サウナのように、利用時間中に石が冷めても、もう追い焚きはできないのだ。

スモークサウナでは、煙の立ち込める室内で何時間も薪をくべ続ける 撮影:村瀬健一

 追い焚き不可ということは、入浴時間までに石を十分熱しておく必要があり、かつ、余熱が長持ちするよう、格別の蓄熱性を備えたストーブが必要になる。その結果、スモークサウナのストーブは巨大化し、やがて釜の周囲を大量の石で覆い固める積石塚のような形状が定着した。