彼らのおすすめ店で大阪名物フードを食べつつ辿り着いたのは、通天閣の足元で1953年から営業を続ける老舗銭湯の新世界ラジウム温泉。ここが彼らの銭湯デビューの地となった。
木札錠の下駄箱に靴をしまい、券売機で入浴券を買うだけでも大わらわ。さらに、低いカランの前で腰を下ろしてかけ湯をするのにも、女湯まで男性陣の戸惑いの声が漏れ響いていた。
日本の湯船は、西洋のぬるめのジャグジーしか知らない彼らには少し熱すぎるだろうかと心配したが、こわごわ足をつけたあとは、とっぷりと肩まで使って気持ちよさそうだった。また、ロウリュ式のサウナ以外はサウナと認めたがらないフィンランド人なので、昔ながらのスチームサウナに対してもイチャモンをつけてくるかと思いきや、ここまでしっかり熱くて強力なスチームサウナは西洋スパになかなかないと、すこぶる好評だった。
女湯で体を張ってくれたおばあちゃん
日本では絶対不可欠な水風呂すら、彼らにとっては異質な存在だ(フィンランドでは海や湖など「天然の水風呂」にしか入らない)。凍った湖で何十秒と留まる耐性を備えた民族とはいえ、人工水風呂に楽々3分以上浸かりっぱなしだったのは、さすがに周りの客を心配させていた。
そして案の定、阿鼻叫喚の巷と化していたのが電気風呂だ。女湯では、参加客のライリさんが躊躇しているのを見かねた常連のおばちゃんが、「あんた、ここより前やったら大丈夫やから」と、なんと一番電流の強い位置で力強く仁王立ちし、自らの身体でバリアを張ってくれた。それでもライリさんは数秒と入っていられなかったが、自分のために体を張ってくれた勇敢で親切な大阪のおばちゃんのことは、その後幾度も彼女の思い出話に登場していた。
