DAY2 江戸時代の薬草蒸し風呂と、日本屈指のオフィスサウナ
2日目は、大阪から在来線を乗り継いで岐阜県大垣市まで一気に移動し、この地域で江戸時代に蘭学医が開発した「薬草蒸し風呂」を体験できる、田辺温熱保養所を訪ねた。かつて皮膚病治療に使われた巨大な樽型の蒸気浴装置で、現代でもリラックス目的だけでなく、体の不調を抱える人々が治癒目的で定期的に通うそうだ。
入浴者は真っ暗な密閉空間に起立し、タイのオップサムンプライ(編集部注:タイ古来の蒸気浴)にも似た、ブレンドハーブの香りと成分を含んだ蒸気を全裸で浴びる。特に温浴と健康の関連性に関心を抱くサウナ史研究者のヘイッキさんは、女将さんから熱心に使用ハーブの効能を聞き出していた。
ロウリュとはひと味異なる、何種もの薬草の芳香が複雑に混じった蒸気をたっぷり浴びたあとは、別室の畳の間で横になって涼み、買ってきた駅弁を食べてくつろいだ。そして再び電車で名古屋まで歩を進め、城見学などをしたあと、夜は株式会社タマディックの本社最上階にある「オフィスサウナ」へ。タマディック社は航空・宇宙分野などの技術開発企業で、2022年に坂茂設計の新社屋に完成した社員用サウナがとても先進的だと、業界内で一躍話題になった。
近年日本でも増えつつあるオフィスサウナ(勤労時間外に社員や来客が利用できる社屋併設サウナ)は、フィンランドでは半世紀前から一般化している。タマディック社の森實社長は、社員らのウェルビーイングに寄与する、日本の草分け的オフィスサウナを実現させたいと連絡をくださり、かつて一緒にフィンランド各地のサウナを視察してまわった。
本場フィンランドからたくさんのヒントを持ち帰っただけあり、浴室の綿密な蒸気設計には、サウナづくりの達人たちも太鼓判を押した。異文化の刺激疲れを感じ始めていた参加者のカリさんは、「僕たちに馴染のあるサウナだったからこそ、会話も弾んで落ち着きが取り戻せた」と、特に満足げだった。また、外気浴テラスから望む大都会の夜景や、サウナ上がりに隣室でいただく洗練されたサウナ飯の数々にも、森の民たちは終始感嘆の声を漏らしていた。
