安藤サクラが「覚えて帰って!」と叫び、佐藤二朗は「怪物」と…

 子役としてデビューした伊東蒼はこれまで「天才」の名をほしいままにしてきた。『島々清しゃ』(2017年)で共演した安藤サクラは舞台挨拶で11歳だった伊東の名前を連呼して「覚えて帰ってください!」と叫び、『さがす』(2022年)で共演した佐藤二朗は16歳だった伊東を「怪物」と形容した。それほどの天才であり逸材なのだ。

『島々清しゃ』(2017年)で共演した安藤サクラと、当時11歳の伊東蒼 ©時事通信社

 2005年生まれの20歳。3歳の頃からダンスを始め、母親の勧めで芝居の世界に飛び込んだ。デビューは6歳のとき。その直後には大河ドラマ『平清盛』(2012年)に清盛の娘・盛子役で出演している。

「このオーディションに落ちたら終わりにしよう」

 多くの人に伊東の存在を印象付けたのが、11歳のときに出演した『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)だ。実はこのときまで伊東はオーディションに落ち続けており、「このオーディションに落ちたらもう終わりにしよう」と母親と話していたという(Bunkamura magazine ONLINE 2025年5月9日)。

ADVERTISEMENT

 末期がんの主人公・双葉(宮沢りえ)に引き取られた夫・一浩(オダギリジョー)の連れ子・鮎子を演じた伊東は、最初は心を閉ざしていたものの、双葉や腹違いの姉・安澄(杉咲花)の愛情によって徐々に心を開いて子どもらしさを取り戻していく難役を的確に演じてみせた。初主演作である『島々清しゃ』では、聴覚が過敏すぎて周囲とコミュニケーションが上手く取れない少女の役を好演した。

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)。(左から)宮沢りえ、杉咲花、伊東蒼、オダギリジョー

 伊東は『湯を~』中野量太監督に「(共演者と)本物の家族になってほしい」と指示され、「役として演じるのではなく、自然な自分として存在する、ということを学びました」と振り返っている(CREA 2022年1月21日)。「自然な自分として存在する」という演じ方は、その後の伊東が演じた役柄にも通じている。中学生になるかならないかの頃に、これほど芝居に対して高い意識を持って臨んでいるのだから、やっぱり天才なのだろう。

 芝居の楽しさに気づかせてくれたこの2作が、伊東にとって大きな転機になった。特に共演した宮沢りえと杉咲花、安藤サクラと山田真歩からは芝居への取り組み方などについて大きな影響を受けている。宮沢と杉咲とは現在も交流を続けており、作品の感想を言ってもらうこともあるのだという。