監督たちが「即決」した逸材
その後、学業に専念するための休業を挟み、復帰作になったのが古田新太主演、吉田恵輔監督の『空白』(2021年)。粗暴な父親(古田)との暮らしで生じたストレスから万引きに走ってしまい、スーパーの店長(松坂桃李)に追われている最中、トラックに轢殺されてしまう悲惨な中学生役を演じた。わずかな出番ながら、観る者に鮮烈な印象を与え、不在でも存在を意識させる難役だったが、吉田監督によるとオーディションでは「即決」だったという。
世間を驚かせたのが、怪優・佐藤二朗と共演した『さがす』だ。伊東が演じたのは、失踪した父親(佐藤)を探す娘役。大阪出身らしいネイティブの関西弁を駆使し、小さな身体からエネルギーを放射しながら、凄みさえ感じさせる芝居を見せている。
「難しそうだけどこの役をやりたい、この機会を逃したくない」と思ったという伊東は、このオーディションでも片山慎三監督の「即決」を勝ち取った(PINTSCOPE 2022年1月21日)。ちなみに卓球のラリーは3週間前から練習したらしい。最初は相手のコートにも届かなかったのに、3週間であれができるのだから驚きである。
不幸な少女が世界を救うファンタジー『世界の終わりから』(2023年)では主演を務めた。紀里谷和明監督は自らの引退作の主演に即決で伊東を選んでいる。もはや即決俳優だ。
朝ドラヒロインへの道も?
NHKのドラマへの出演も多い。主なものだけでも、朝ドラ『おかえりモネ』(2021年)では震災で心に傷を負った中学生役、『やさしい猫』(2023年)では入管によって理不尽な目に遭うスリランカ人男性と結婚した母(優香)を支える娘役、大河ドラマ『どうする家康』(2023年)では浅井長政の裏切りを伝えるため命を賭けて走り続けた侍女役、『宙わたる教室』(2024年)では起立性調節障害を抱える定時制高校生の役などが並ぶ。
『テミスの不確かな法廷』(2026年)でも、父に過重労働を強いた会社相手に訴えを起こす娘役を演じている。いつか必ず朝ドラヒロインを演じることになるだろう。

