「まるで宝の山を手に入れたような気分」

 まず片桐は店のシャッターを下ろし、店内の電話線を切断、外部との連絡手段を絶った後、店内にある武器の確認に入る。ロイヤル銃砲火薬店には各種のライフル銃や散弾銃、大量の弾薬が保管されており、それらを喜々として手に取った。後の供述によれば、「まるで宝の山を手に入れたような気分だった」という。

 夢にまで見た理想の空間で、片桐は恐怖に怯える人質の店員に銃への弾薬装填を命じる。自分1人では時間がかかりすぎるため、店員たちの知識と技術を利用したのだ。このときも「申し訳ありませんが、お手伝いください。ご迷惑をおかけします」と不気味なまでに丁寧な話し方だったそうだ。

 こうして、短時間で大量の武器の準備が完了するのだが、着目すべきは片桐が射程距離が長く威力の高いライフル銃を中心にセレクトしていたことだ。これは遠距離にいるであろう警官を狙撃する戦術的判断によるものだった。準備が整ったところで、片桐は入口付近、窓際、レジカウンターなど店内の様々な場所に銃を配置。これまた、あらゆる角度から狙撃するための戦略だった。

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 この間、市民から寄せられた通報により、座間町の警察官射殺事件と逃走中のカージャックが次第に関連づけられ、警察は犯人の足取りを追って渋谷方面へ向かっていた。片桐も店の窓から数台のパトカーが遠巻きに配備されていることを確認、すでに包囲が始まっていることを察知していた。が、焦りは一切なかった。逆に、この状況こそが待ちに待った瞬間で全て事前の計画どおりだった。