WBCにチェコ代表として出場したオンドジェイ・サトリアの住むオストラバという町は、首都プラハから東へ370kmの距離にある。かつては石炭の町として栄え、チェコ第3の人口を抱える都市ではあるが、10km先にはポーランド国境がある東端の辺境だ。観光資源は少なく、チェコ語もプラハとはずいぶんちがう。
そんなオストラバで6歳から野球を始めたサトリアは、そこから23年後、身長175cm76kgのすらりとしたひげの男性となって、東京ドームで42340人の視線を釘付けに、そして世界の野球ファンを虜にした。
日本在住のチェコ人より多い500人が応援に駆け付けた
3月6日、東京ドーム。チェコ代表は2026年のWBC第2戦でオーストラリアと対戦した。観客席が半分ほど埋まった会場では、内野席からも外野席からもチェコ語の応援が響く。この日2番手で登板したサトリアは、見事に敵の打線を抑えた。
チェコ代表チームとしては5-1で負けを喫したその試合の後、若手有望株マレク・クレイチリク選手の父は観客席で「今日は惜しかった。あのダブルプレイが重要だった!」とまるでテレビの前の昭和のお父さんのように悔しがっている。チェコを応援しているという私たちに、目を大きくしながらこう言う。
「今回のWBCにチェコからどれくらい応援が来ているか知ってる? 500人だよ」
率直に驚いた。この数字はおそらく日本に住むチェコ人の合計よりも多い。飛行機で1日近くかかる極東の国まで、しかもチェコではほとんどの人がルールも知らないようなスポーツのために、500人もが観戦に訪れているのだ。
SNSに投稿したチェコ戦の写真にメッセージが
その夜、東京ドームのチェコ戦の写真をSNSに投稿すると、とあるアカウントからメッセージが届いていた。baseballstatczというチェコ野球ファンサイトの管理人からだった。「写真の3枚目にサトリアのお父さんと弟が写っていますよ」とスクリーンショットに赤い丸をつけて教えてくれた。
その日、その写真を撮ったのは、背の高い彼らが着ている赤、青、白のチェコのユニフォームが陽の光を浴び、ドームの前でひときわ目立っていたからだった。
「知り合いなんだけど、すごくいい人たちなんです」。チェコ人がこう言ってくるときは、信憑性がとても高い。

