本当にこの時期は心がしんどかったです。「別にいいもん。こっちはいつでも日本に帰れるから」と何度も心に言い聞かせていました。母親や伯母は日本にいるし、自分には帰る場所がある――これが当時の心の支えでした。

「お箸使えるんですね」が相手を傷つけているかも……

海外で暮らすマイノリティ(少数派)として、こういう経験は避けられない部分もあります。でも、差別的な人はごく一部。ほとんどの人は善良です。これだけは強調しておきたいところです。

そして、自分では差別と思っていなくても、それが差別的な発言や行動に当たることもあります。日本人が外国人に「日本語お上手ですね」「お箸使えるんですね、すごい」と褒めたつもりで言っても、言われた側、特に日本での生活が長い人にとっては、「自分はまだ日本社会の一員として受け入れられていない部外者なんや……」と感じさせ、傷つける可能性があります。

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個人的には、カナダに暮らして十数年経った今、こういった小さな傷つきに対してはかなり図太くなりました。「差別するようなしょーもない人にエネルギーを使いたくない」と思います。でも同時に自分も無意識に差別する側にも、される側にもなる可能性もあるのだなと改めて感じています。

CAが陥った「英語コンプレックス」

実はカナダに移住したばかりの頃、髪の毛を短くしていました。北米のアジア系男性は短髪にしている人が多く、私も彼らのスタイルを真似てみたのです。当時は「とりあえず見た目から『カナダっぽく』しなきゃ!」と強く思っていました。

職場では、日本ではしないようなオーバーリアクションをして「カナダ人らしく」振る舞おうとしていました。けれど心の中では「これは、ほんまの自分じゃないな」と違和感を覚えていたのも事実です。

こういった現象を「過剰適応」と呼ぶようです。特に少数派(マイノリティ)が新しい環境に必死で馴染もうとすると、自分を押し殺してしまう――そんな状態のことです。