「カナダ人らしくしなくては」と思っていた頃には、英語へのコンプレックスも抱いていました。新人時代にはブリーフィングの最中、私がごく簡単な言い回しの英語で発言したにもかかわらず、あるベテランクルーに「何を言ってるか、わからへん」という意地悪なリアクションをされたことがあります。他のクルーは全員理解しているにもかかわらずです。

ショックを受ける質問「どこ出身?」

それからというもの、機内アナウンスするときも「お客さんから『あの人の英語、何?』とか言われるんちゃうか」「同僚から英語をダメ出しされたらどないしよ……」と、常に不安が頭をよぎるようになりました。

“Where are you from?(出身はどこ?)”と聞かれるのもすごくショックでした。「自分の英語がおかしいから聞かれてるんや」と過敏に反応していたからです。また、相手の言っていることがわからなかったら、すぐに“Sorry”と下手(したて)に出てしまうことも。そうなるとさらに気持ちが焦ってしまい、ビクビクした態度になって、ますます悪循環に陥ってしまうのです。

ADVERTISEMENT

英語のアクセントを気にしない非英語圏の同僚たち

しかし、そんな英語コンプレックスも徐々に薄れていきました。クルーの中には、英語が母語ではない人が私以外にも大勢います。彼らは強いアクセントがあっても特に気にする様子はなく、英語を堂々と話しています。あるメキシコ人のクルーは、持ち前のラテンの陽気なノリで、あっという間にその場の空気を自分たちのものにしてしまいます。ときに母語のスペイン語で“Hola!(オラ!:やあ!)”と挨拶をしていることもありました。

またこんなこともありました。ブラジル人のCAがカナダ人の同僚にアクセントをからかわれたとき、「私へのリスペクトに欠けている。二度と話しかけないで!」と怒り、相手を黙らせたのです。彼女の毅然とした態度に「かっこいい!」と思うと同時に、英語コンプレックスを抱いていた自分がなんだかバカバカしくなってしまいました。やがて「だってこっちは日本人やし、別に英語にアクセントがあってもそれでええわ」と思えるようになったのです。