大型バス5台、約200人の大移動
3月8日、いよいよカタールを脱出する日が来た。美味しい食事と寝床を用意し、いつも笑顔で話しかけてくれたホテルスタッフに、感謝と別れを告げた。
4時に起きてチェックアウトし、手配したUberで集合場所となった在カタール大使館近くの駐車場に到着したのは5時半過ぎだった。久々に太陽の下で待つ間、ミサイルが飛んでこないかヒヤヒヤして、つい空を見上げてしまう。
駐車場には、修学旅行で乗ったような大型バスが何台も止まっている。そのバスに一度乗り、在カタール大使館敷地内の受付まで移動する。受付には3、4人の女性スタッフがいて、パスポートを渡すと、名前を照合し、改めてバスの号車を割り振っていく。
40名ほど乗れる大型バスの車内は、日本のバスに比べてもその設備は遜色なく、なんとスマホを充電できるUSBポートまで付いている。一気に安心感が広がった。
8時半、約200名を乗せたバス5台がようやく出発した。それぞれの号車に、在カタール大使館の職員が乗車する。私が乗る号車の職員は、ミラノ領事館から応援に駆け付けたという経験豊富な方だった。空港からホテルに入るときは大慌てだったので、このとき初めて、ドーハの近代的な街並みを目にした。
10時頃にサウジアラビアとの国境に到着。まずはカタールの出国審査を行う。1人ずつバスから降りて個室に入り、空港と同じようにチェックをしていく。周りには紺色のベレー帽を被った警察官がウロウロと歩いている。当局に目を付けられないように、国境周辺では写真撮影はしないようにと、大使館職員から何度も釘を刺された。1時間半以上かかって、ようやくカタールを出国した。
砂漠の越境に6時間超え
サウジアラビアの入国審査の建物に到着したのは正午頃。平屋の広々とした建物の中に、空港のようなカウンターがいくつか並んでいる。パスポートを渡すと、事前に申請したビザの名前と一致するか照合する。事前に申請を済ませていたお陰で、順調に入国審査を済ませることができた。バスで到着した我々の他にも、さまざまな国の人たちがいて、中にはカタールに駐在していた日本人家族の姿も見受けられた。
入国手続きを済ませ、バスで10分ほど砂漠の中を走ると、屋根のある場所でバスが止まった。今から税関検査をするという。貴重品を持ってバスを降り、男女分かれて待合室に入るように言われる。洗面所に行くと、汲み取り式の“ぼっとん”トイレで、トイレットペーパーがあるはずもなく、持参したものを使う。洗面台の栓をひねっても水は出てこないため、ウエットティッシュで手を拭いた。
サウジアラビアでは、生のフルーツ、豚肉の製品、酒類の持ち込みが禁止されている。バスのトランクを開けて、そういったものがないか、チェックをしているそうだ。ひんやりとした待合室のベンチに腰をかけて、ただ時間がすぎるのを待った。30分ほど待っただろうか。バスに戻るように呼ばれた。
ドーハ市内から国境まではバスで90分ほどだったが、サウジの税関を終えたときには、出発からすでに7時間半が経過していた。
「Japonais(ジャポネ)?」
バスには、さまざまな日本人がいた。休学して世界一周している大学生、ルワンダを目指していた男性、ヨーロッパの船旅に向かっていたツアー集団、出張中の会社員など、長いバス旅の合間にぽつりぽつりと自己紹介をして、それぞれのドーハでの体験を語り合った。


