受け入れがたい事実に直面したとき、人間はどう反応するのか

藤野知明さん ©三宅史郎/文藝春秋

藤野 映像の『どうすればよかったか?』については、2点テーマがあると思っています。1点目は、「なぜ両親は病院に行くことを拒んだのか」。もう1点は、「玄関に南京錠をかけたことが、姉の精神状態にどのような影響を与えたのか」ということです。映像はその2点についてのものだから、フォーカスしているのは姉ではなく、両親と僕なんです。

白石 統合失調症の人についてではなく、藤野さんや、家族というのがどうなるかという話ですよね。

藤野 今申し上げたように当初、家族っていうテーマは、僕としては持っていなかったんです。でも配給会社が家族のありようを問う視点を広告に加えました。これはすごいと思いました。統合失調症の有病率は1パーセントといわれています。そうすると、例えば日本国内で上映したとして、その1パーセントの人を中心に関係のある人たちに向ける映画になる。でも「家族」という切り口によって、それよりはるかに多くの人にとって身近な話になります。

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 単行本の表紙にもなっている、映画のメインビジュアルは86年に撮影された家族写真で、姉に最初の急性症状が出た83年から3年が経っています。ここに姉一人の写真が出るということは嫌だったんです。姉一人をさらし者にしているような感覚にもなるし、そもそも姉にフォーカスした映画でもないと思っています。

『どうすればよかったか?』 ©2024動画工房ぞうしま

 上映が始まってから気づいたのは、これは統合失調症に限らず、受け入れがたい事実に直面したときに、人間がどう反応するのか、考えるのかということについての記録であるということでした。

白石 本当に、それが一番正しくこの映画を表している感じがします。

藤野 本にしても、映像にしても、統合失調症の人を社会の外側に見る感じがあるんですよね。メディアでも、“異常”とか“異変”みたいな言葉を使って形容していることがありますが、そういう表現には違和感を覚えます。理解できない存在だと最初から線引きをしている表現は気になります。