「男性が変わる物語」を男性が描くべき
河野 現実に昭和的なハラスメントをする男性が生まれ変われるかと考えると、僕は正直、悲観的なんです。その人を反省させる努力をするよりも、懲罰を加えたり、被害者を救うほうが早いと思ってしまう。だからといって物語がダメということではありません。本作は一つの「モデル」として、変われる可能性を示している。それも手放してはいけない希望なんですよね。
瀧波さんの『無痛恋愛』でも感動的に変わる男性たちが出てくるじゃないですか。物語にああいう存在が登場してくれると、やはり救いになります。
瀧波 その「男性が変わる物語」を、本当は男性が描いて、男性に読ませるべきだと思うんです。そのためには「これが新しい男らしさだよ」と言ってもらってもいいと思う。男らしさそのものを捨てられないなら、男らしさの価値観をアップデートしてくれればいい。でも、今のところそういう作品は男性に受けないんでしょうね。
河野 男性自身がその物語を編むべきだというのは、本当におっしゃる通りだと思います。
瀧波 漫画において、男女で読むものはすごく分かれています。社会問題を取り上げる作品は「このマンガがすごい!」でもオンナ編に入れられていることが多いんです。人を思いやり、手を取り合い、連帯したりする物語を女性ばかりが読まされている。そんな中で生まれたのが『あんたが~』ですよね。でも、『あんたが~』も中心的な読者は女性です。
※フェミニズムと高市早苗現象の関係や、若い世代の感受性の変化、エンタメで描かれる暮らしの丁寧さなどについて語られた記事全文は、『週刊文春WOMAN2026春号』で読むことができます。
瀧波ユカリ
たきなみゆかり/1980年北海道生まれ。2004年『臨死!! 江古田ちゃん』(講談社)でデビュー。Web漫画サイト「&Sofa」にて『わたしたちは無痛恋愛がしたい ~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』を連載中。今年2月に第8巻が発売。その他作品に『モトカレマニア』(全6巻)、『ありがとうって言えたなら』など。
河野真太郎
こうのしんたろう/1974年山口県生まれ。専修大学国際コミュニケーション学部教授。専門は英文学、イギリスの文化と社会。著書に『新しい声を聞くぼくたち』(講談社、2022年)、『増補 戦う姫、働く少女』(ちくま文庫、2023年)など。訳書にジョー・リトラー『反メリトクラシー: 新自由主義と平等の神話』(人文書院、2026年)など。
写真:橋本篤
