映画館で時代劇、そういえば久しぶりです。今回は、本作の舞台となった木挽町にも近い日本橋の劇場で調査してきました。原作を大胆にアレンジした構成にビックリし、あの『科捜研の女』の和装にしびれました!

今週のターゲット『木挽町のあだ討ち』

〈あらすじ・概要〉永井紗耶子による同名の傑作時代小説を柄本佑&渡辺謙の初共演で映画化。1810(文化7)年1月、江戸の木挽町で起きた、美しい若武者・菊之助(長尾謙杜)による見事なあだ討ち。1年半後、この事件には腑に落ちぬ点があると、ひとりの男が江戸にやってきて──。源孝志監督。120分。公開中。

映画『木挽町のあだ討ち』

◆ ◆ ◆

ADVERTISEMENT

 TOHOシネマズ日本橋。水曜の午後3時台という中途半端な時間にもかかわらず、客席は6割ほど埋まっています! 最近ではちょっと珍しい光景にうれしくなります。シニア層を中心に有閑マダム風の二人連れなども。土地柄のせいか、どことなく客席にも上品な空気が漂います。

 本作は、直木賞と山本周五郎賞をW受賞した永井紗耶子の小説が原作。「木挽町」とは現在の東銀座あたり。そこで成し遂げられた「あだ討ち」の裏に隠された真実を探るというミステリー時代劇です。

 となれば、主演の柄本佑の役はあだ討ちを遂げる侍? ではなく、原作では聞き役に徹して一言も喋らない男・加瀬総一郎でした。探偵として、「刑事コロンボ」よろしく事件の目撃者・関係者に話を聞き、謎に切り込んでいく……。これは映画オリジナルの構成なのだそうです。

 実は原作を読んでいたので、その工夫にまずびっくり&なるほどでした。ただ、原作では無味無臭の人物にキャラクター性を持たせるためか、柄本さんの飄々とした演技はともかく、随所に挟まれる小ネタやギャグ要素には少々興ざめ。ベースの筋立てと人間ドラマが文句なしに素晴らしいのだから、変に照れ隠しのような味付けをせず、ド直球の人情劇を作ってほしかった! そういう意味では、冒頭、雪の中でのあだ討ちシーンは、まさにド直球。これぞ映画という映像美は見事でした。

 ミーハー的な視点でいうと、あだ討ちを遂げた若武者・菊之助の母を演じた沢口靖子さんに、ぜひご注目を! 長きにわたる『科捜研の女』シリーズで定着した白衣のイメージを一新する着物姿に惚れ惚れ。日本髪も抜群に似合っていました。今後は時代劇で引っ張りだこになるのでは?

 そして菊之助の父役の山口馬木也さんも。そう、時代劇愛にあふれた大ヒット作『侍タイムスリッパー』の主演でブレイク、現在は大河ドラマ『豊臣兄弟!』で柴田勝家を熱演中の、あの人です。本作でも、武士らしい重厚な佇まいで画面を引き締めています。

 さて上映後。マダムたちは「映画館は『国宝』以来だけども、よかったわね」と満足そう。さらに「時代劇なんて久々だったわ」と。確かに。『侍タイム~』でも描かれていましたが、いま時代劇は風前のともしび。日本ならではの情緒、それを支える匠の技。堪能するだけじゃなく、応援のためにも、ぜひ劇場へ!

次のページ 写真ページはこちら