“イヤミスの女王”の異名をとる小説家・湊かなえの集大成とされる社会派ミステリー。しかも、その原作者自らが「泣いた」と豪語する感動作、果たしてその真偽やいかに!? 連休明けの映画館で調査してきました。

今週のターゲット 『未来』

〈あらすじ・概要〉複雑な家庭環境で育ちながらも夢を叶えて小学校の教師となった真唯子(黒島結菜)。その教え子で、やはり過酷な環境にある章子(山﨑七海)のもとに“20年後のわたし”から手紙が届いた。差出人の正体は? また、その目的とは? 湊かなえによる同名ミステリーを映画化。130分。瀬々敬久監督。

映画『未来』公式Xより

 今回の調査現場はTOHOシネマズ 六本木ヒルズです。月曜日の昼下がり、館内には静かで落ち着いた空気が漂っています。ターゲットは、湊かなえ原作の『未来』。何より気になったのは公式サイトに寄せられていた原作者のコメント、「物語に込めた思いがすべて掬い上げられた内容、構成になっており、いち鑑賞者として感動し、泣きました」。つい、「自分で言うんかい!」とツッコミを入れたくなってしまった次第であります(笑)。

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 物語は、黒島結菜演じる教師・真唯子の教え子である章子(山﨑七海)のもとに「20年後のわたし」から手紙が届くところから動き出します。差出人は誰? がミステリーの肝。その背景として母の恋人から暴力を受け、学校でも凄絶ないじめに遭っている章子の過酷な日常が描かれ、恐ろしい計画も進んでいき――。

 少々厄介だったのは、小説ではまさに“読みどころ”になるのであろう入り組んだ設定が、映像だと追いづらい点でした。章子の現在、真唯子の現在、真唯子の過去、そして章子の両親の過去……と、異なる時制が交互に展開する構成に頭がヘトヘトに。

 その上、少女への理不尽な暴力、逃げ場のない教室でのいじめなどヘビーな内容がてんこ盛り。さらに子どもの貧困やヤングケアラーの問題も重要なテーマとして描かれます。もちろん目を背けてはいけない現実社会の問題を強く投影してこその“イヤミス”だとわかってはいるのですが、精神状態が良好な時でないと、その重さにもたれてしまうかも。そういう意味では原作者が込めた思いは、ずっしりのっていたと言えそうです。

 そんな中での唯一の“光”が、闇落ちしていく少女を必死に救おうとする教師こと黒島結菜の存在感でした。まず、走るのが速い! 瀬々敬久監督も、彼女の瞬発力や抱きしめ方といった“身体表現”には理屈を超えた情感が宿ると語っていたそうで。なるほど、演技は顔だけでするものではないんですねえ。

 で、肝心の「泣けたか?」判定。まったく泣けませんでした。いやいや、待ってください。感動しなかったわけではなく、人って絶望が濃すぎると涙は出ないのかもしれません……。つまり、本作をご覧になるのに用意すべきはハンカチではなく、クリアな頭脳と万全の精神状態ということです。確かに観るのはしんどいのですが、それだけの価値はある作品でした。

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