2026年WBCのチェコ対日本戦。チェコはプールCの5位、日本は1位が決まっていて、実力差からも消化試合であったのかもしれない。しかし、観客をひきつけたのは単なる勝敗ではなかった。
フルタイムのプロ野球選手ですらないチェコの投手オンジェイ・サトリアが日本相手に4回2/3イニング無失点。継投した大学生ミハル・コバラも好投。“野球をしにきた観光客”と揶揄すらされたチェコ代表は、そんな寝言を実力で跳ね返した。
チェコ代表はなぜこのようなことができたのか。
ハジム監督が英会話の練習をしているワケ
それには代表監督のパベル・ハジムを抜きに語ることはできないだろう。なにしろ、昨秋、3世代にわたって切望した野球の欧州選手権のメダルを、ハジム率いる代表チームがようやくチェコに持ち帰ることができた。その栄光をハジム監督は「幸運は準備と機会の組み合わせ」と言葉にした。WBCの日本戦を控えた記者会見にて、ハジム監督はその銅メダルを首にかけて登場した。
チェコ代表悲願のメダルへの道のりは、今年2月にYouTubeに公開された短編ドキュメンタリー「願いは奇跡(Touha je zázrak)」が詳しく伝えている。その中で印象的なのは、ハジム監督が「英語の先生が待っているんだ」という場面だ。日常の一部なのだろう、自分のオフィスで英会話の練習をする姿が収められている。
代表監督として、試合前後には毎回の記者会見がある。それだけでなく、大会スタッフや、他国の野球チームの監督、選手と話すこともある。世界の野球の状況をつかむために、チェコ野球の正しい姿を伝えるために、ハジムはいまも英語を習っているのだ。
日本戦後の記者会見でも、司会者が終了を告げようとするとハジムは自ら「1分ください」と英語で伝えた。上下を確認しながら慎重に、しかしすばやく「必勝」のはちまきをつけ、立ち上がって背番号89を示しながら、ハジムは「野球フォーエバー」と宣言した。英語にならない気持ちを抑えつけたり、あきらめたりせずにパフォーマンスでも伝えたハジムに、記者たちからの拍手が起こった。
