垣根 例えば、今回の足利尊氏だと、大河ドラマの『太平記』が有名ですけど、あの勇ましい尊氏像に違和感があったんです。僕は違和感がまず最初に来ますね。「この人は本当は、そんな人じゃなかったんじゃないかな?」って。
池井戸 そんなこと思うのがまずすごいよね。僕は大河を見ても思わないね。
垣根 僕が池井戸さんだったら、岐阜に生まれてなんて幸せなんだろうと思ってますよ。
池井戸 どうして?
垣根 書く武将がいっぱい居るからです。織田信長でしょう。可児才蔵……。
池井戸 斎藤道三とか?
垣根 そう、斎藤道三とか。明智光秀だってそうです。日本の有名な武将って半分ぐらい岐阜から出ていたり、関係していますからね。
池井戸 これまでまったく目につかなかった。
垣根 たぶんそこに興味がないから目につかないんですよ。
池井戸 そうだね。武将は全くスルーしていて、僕の目についたのは消防団というわけで(笑)。
垣根 池井戸さんは、そっちの方が好きな人なんです。
お互いの小説観を探る
垣根 昔からよく思ってたんですけど、池井戸さんって、発言がひとつひとつ常に地に足がついている。
池井戸 そんなことないよ。結構テキトーなこと言ってるよ。
垣根 いやいや。世の中の仕組みが見えたうえで物事を言っている。だからもし、池井戸さんに歴史時代小説を書いてもらえるなら、岩崎弥太郎を書いてほしいな。
池井戸 岩崎弥太郎か……。
垣根 あとは、大隈重信も。結構いけるんじゃないかな。
池井戸 書けないんだよ。この前、福沢諭吉を書こうかと思って、構想を練り始めたんだけど……。
垣根 えっ? 書く気満々じゃないですか。
池井戸 彼が若いときに大坂の適塾に行って勉強するんだけど、その当時の風俗が全然書けそうになくて。雰囲気が分からないんだよね。
垣根 それは書かなくていいじゃないですか。
池井戸 まあ、いいかもしれないけど、全く分からなくて書かないのと、分かっててあえて書かないのは違うでしょう。本当にこれでいいのかって疑問に思うとそこで止まっちゃうわけ。『半沢直樹』だったらもっと簡単に書けるわけだし。
