「こっちは300円、器が良いのは500円」――。乳児をモノのように売りさばき、通常の半分以下の食事で169人もの命を奪った石川夫妻。

 横領した養育費や闇市での横流しで巨万の富を得た2人の犯行手口、そして晩年に主犯のミユキが「冤罪」を主張した理由とは? 鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』よりお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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「こっちは300円。あっちは器量が良いんで500円」

 このような女性に向け、石川夫妻が運営する寿産院は新聞に三行広告を掲載、当時としては大金の5千円~1万円(現在の貨幣価値で約20万円~40万円)の養育費とともに乳児を引き取った。

 そして、希望者が現れれば容赦なく売りさばく。実際に寿産院で貰い子を譲り受けた女性によれば、このときのミユキは店で品物でも売るように、ビジネスライクな言葉を発していたそうだ。

「欲しいのは女の子? こっちは300円。あっちは器量が良いんで500円」

 もっとも、これだけなら“がめつい人助け”を生業とする病院経営者に過ぎない。しかし、寿産院における乳児の扱いは虐待以外の何者でもなかった。