池井戸 僕もお金の話は書いてないわけじゃないんだけど。今、書くとしたら何がいいかな。通貨が円に変わるときのこととかどう?
垣根 円に?
池井戸 今、日本の通貨は円ですけど、昔はそうじゃないでしょう。一両、二両とか両、分、朱という四進法の貨幣から、明治時代になって十進法の円貨幣に変わる。つまり、通貨が変わるという激動の時代を日本経済は経験したわけですよ。そこで大事業を成し遂げた人もいる。すごいダイナミックな動きがあったと思うので、面白いかもしれない。まぁ、それは、垣根先生に書いてもらえればいいなと思って(笑)。
垣根 いやー、それは無理ですよ。だって僕、お金の成り立ちに興味があるだけで、経済に関しては素人ですもん。
歴史小説でも現代小説でも、書きたいものを書く
池井戸 垣根さんは、もう現代ものの小説を書くことはないの?
垣根 そんなことないです。書きたいものがあったら書きます。逆に言うと、歴史上の人物で書きたい人物がいなくなったら歴史小説はもう書かないですね。ジャンルを書くわけではなく、書きたいものを書くために、僕の作家人生はあると思っているので。
池井戸 今、本がどんどん売れなくなってきている。とはいえ、じゃあ売れるものを狙って書くというのもちょっと違う。結局自分ができることって少ないんだよね。作家は変わらず書きたいものを書くけど、環境の変化に合わせて売り方を変えるしかない。このところ見ていて変わったなと思うのは、オーディブル。本当に伸びているんですよ。あと、作家がテーマやストーリーを考えていると、このアイディアは小説向きじゃないと思って捨てることってあるじゃない? 小説にすると陳腐だなとか。
垣根 たしかに、ありますね。
池井戸 でも小説では使わないけど、映像だったら使えるアイディアだなってことがある。だったら、それをいきなりドラマの原案として渡す。
