池井戸 これからの作家って、いわゆるコンテンツ・プロバイダー的な立ち位置にもなれるということが最近分かってきた。

垣根 なるほど。小説のシノプシスみたいなものを渡して。

池井戸 そうそう。せっかくなら開発から携わって、脚本も確認して、作家がちゃんと関与して映像を作ったら、すごくいいエンタメができると思うんですよ。出版社は、版権契約を扱うライツ事業に力を入れ始めているよね。映像やゲーム関係とか様々なルートを持っている版元が、作家から聞いたアイディアを、この話はゲームだったらどうだろうとか、アニメの原作ならどうだろうと提案して繋げていく。編集者の仕事の考え方もこれまでとは変わってくると思う。

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垣根 それは面白いな。普段、お互いに真面目な話をしたことがないから、発見が多い(笑)。

垣根涼介さん

池井戸 けれどやっぱり、書いたものが多くの人に読んでもらえるっていうのが作家としては一番いいよね。

垣根 それはそうです、本当に。

作家は時として世間の誤解にさらされる

池井戸 書いて出版してもなんの反応もないとか、スルーされると、本当に残念な気持ちになる。

垣根 悲しいですよね。でも、池井戸さんはもうそういうことはないんじゃないですか?

池井戸 いや、そんなことないし、僕の場合は誤解も多いわけ。例えば、ドラマで土下座のシーンとか、役者さんの顔芸が目立つと、池井戸が書くものはそういう小説なんだと誤解される。最近、中古車販売業者の不祥事があったよね。すると、「池井戸が小説化の準備をしてるぞ」みたいな書き込みが、ネット上に出たり……。どうも僕は、不祥事対応というか、大企業の闇ばかりを書く作家だと思っている人が結構居るんだよね。

垣根 それはちょっと腹が立ちますね。

池井戸 僕のもとにタレコミのお手紙とかも届いてね。

垣根 (笑)。まるで『週刊文春』じゃないですか。

池井戸 そう。だから、『週刊文春』に持って行って下さいって伝えるんだよ。以前もうちにいきなり訪ねて来た人がいて、「こんなひどいことがあったんですけど、ぜひ小説にしてください」と置き手紙があって。正直、非常に迷惑してるわけです。

垣根 それは声を大にして言いたいですよね。ここではっきり言いましょう。もう二度と来ないでね、と。

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垣根 涼介

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最初から記事を読む 「三回目の候補で受賞できてよかった」「僕も三回目の候補で受賞。三回目ぐらいまでが楽しめるかもね。そこから先はだんだん楽しめなくなってくる」