凶悪な犯罪に手を染めた犯罪者たちは逮捕後、何を思いながら日々を過ごしているのか。
ノンフィクションライター・片岡健さんの新著『実録 死刑囚26人の素顔』(宝島社)から、6人の男性が不審死を遂げた「鳥取連続不審死事件」で逮捕された上田美由紀のケースをお届け。犯行当時、ゴミ屋敷に住んでいながら男性たちに取り入った上田の手口などを紹介する。
◆◆◆
上田が男性たちに取り入った「手口」
取材を始めた当初に印象的だったのは、美由紀が人をよく褒めていたことだ。
たとえば、捜査段階と裁判員裁判の国選弁護人を務めた鳥取の弁護士たちについて、美由紀は「逮捕された時から何百回も面会に来てくれ、今も感謝しています」と言ったり、松江刑務所の刑務官たちについて、「収容者一人一人の話をしっかり聞いて対応してくれるんです」と言ったりした。
さらに美由紀は私のこともよく持ち上げた。
私は最初に手紙で美由紀に取材を申し込んだ際、過去に雑誌に書いた事件関係の記事をコピーし、同封していたのだが、美由紀は手紙に「片岡さんの記事は何度読んでも、心にどっしりきます」と書いてきたり、面会中に「片岡さんと出会えて本当によかったです」と何度も口にしたりした。
ここまで過剰な褒め言葉は噓くさくもあるが、褒められて悪い気はしないものだ。不審死した男性たちに対しても美由紀はこうやって心に入り込んだのだろうと思った。
裁判では、美由紀は、交際相手の男・安東儀導(逮捕時46)と共謀して取り込み詐欺を繰り返したほか、2人の男性を殺害したと認定されていた。
1人目の被害者は、元交際相手のトラック運転手の矢部和実さん(死亡時47)。美由紀は2009年4月4日、矢部さんから交際中に生じた借金270万円の返済を迫られたため、睡眠薬を飲ませ、海の中に引きずり込んで殺害したとされた。
2人目の被害者は、電器店経営者の圓山秀樹さん(死亡時57)。美由紀は圓山さんから家電6点の代金約53万円の支払いを迫られたため、同年10月6日、やはり睡眠薬を飲ませ、川の浅瀬に引き入れて溺死させたとされた。

