最強怪獣ゼットンの名前は、なぜ「ゼットン」なのか――。その由来をたどると、特撮史に隠されたユーモアと美術的センスが浮かび上がる。
怪獣や宇宙人のネーミングに秘められた意外なルーツを、ライターの桜井顔一氏の新刊『日本特撮 人気作品の裏設定』(鉄人社)からひもとく。(全2回の2回目/最初から読む)
◆◆◆
美術と造形が生み出した、シュルレアリスムの怪獣
『ウルトラマン』『ウルトラセブン』には時折超シュールなデザインの怪獣、宇宙人が存在するが、これは美術の成田亨と造形の高山良策両氏の功績が大きい。中でも際立っているのが、『ウルトラマン』第17話「無限へのパスポート」(66年11月6日)に登場するブルトンだ。
フランスのシュルレアリストで詩人のアンドレ・ブルトンから名前を拝借し、その形状も従来の怪獣とは異なり金持ちの家の応接間にでも飾っていそうな名称のよくわからない芸術品を彷彿させる。イソギンチャクやホヤ貝の海産動物をモチーフにデザインされ、四次元現象を引き起こす能力で科学特捜隊や自衛隊は勿論、ウルトラマンですらとっくみ合い不可能でひたすら回転させられるこの置物怪獣に大苦戦した。最後は結局スペシウム光線で倒されるが、この回は全体的にはコメディタッチのライトなストーリーであった。
第28話「人間標本5・6」(67年1月22日)に登場する三面怪獣ダダは、ダダイズムや赤ちゃん語の「だあ、だあ」を元にしているといわれている。オプ・アート(視覚、光学的美術)のゼブラ調ボディや、特に意味もなく変化する顔面、スチール写真に見られるグラビアアイドルなみのセクシーポーズ、そして3分以上戦っているかのようなウルトラマンの無駄に長い出番など見せ場も多く与えながら難易度の高い攻撃を仕掛けてくる謎の宇宙人であった。
