作品誕生につながる森の暮らし

――ここで、せっかくの機会ですので、会場の皆さんの中で小川さんに質問がある方はいらっしゃいますか?

観客 森での生活をする中で、執筆されているときに、いいインスピレーションを受けたといったエピソードがありましたら教えてください。

小川 そうですねぇ。周囲の自然は常にいろんなものを見せてくれるんです。一日に1回はどこかで「うわぁ! きれい」と思わず叫びたくなるような感覚になります。それは山や空を見ても同じで、いやなことやモヤモヤした気持ちも本当にそれですべてが吹っ飛ぶ。そういう意味では、日々、美しさを見せてもらっているなっていう気がします。そしてそれが作品につながっていると感じます。

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観客 作品に出てくる主人公は身近にいる方だったり、糸さんご本人だったりするのでしょうか?

小川 身近にいる人をそのまま書くってことはあまりないんですけど、この面白くて素敵な人が、こういう仕事をしたらどういうふうになるかな、と人物像を膨らませたり、こんな人が傍にいてくれたらいいよね、という理想的な人物を主人公にすることがすごく多いです。

イベント当日、小川さんが肩にかけていたキュートなポシェット。撮影:鈴木七絵

観客 ご著書の中で、『ファミリーツリー』が好きなんです。開運堂(長野県松本市)の「白鳥の湖」というお菓子が出てきたので、自分でも頂いてみたらとても美味しかったんですが、長野の地元のお菓子を作品に盛り込むことをされているんですか?

小川 はい。私は最初、友人から「白鳥の湖」をお土産でいただいたんですけれども、なんて品がいいお菓子で、見た目もかわいらしいし、すごくいいなと思って、作品の中にも登場させました。

 そして今はせっかく長野県に住んでいるので、おやきを広めたいと思っていて、その研究をしているところです。

――ご自身でおやきを作っていらっしゃるんですか?

小川 たまに作ります。今日も来るときにおなかがすいたので、買ったおやきを食べてきました。おやきの世界は、蒸したり、焼いたり、あるいは蒸したものを焼いたりと、地域によって作り方に違いがあって奥が深いし、簡単に食べられていいものだな、としみじみ思います。

イベントの後の、サイン会で。撮影:鈴木七絵

――小川糸さん、どうもありがとうございます。

「いとしきもの」についてお伺いできて充実した時間でした。本書にも森の美しい写真がたくさん掲載されておりますが、自然豊かな地元・長野の良さに、皆さま改めて思いを馳せられたのではないでしょうか。

 この本を読んで、ぜひご自分の「いとしきもの」を見つけていただけたら嬉しいです。最後に、小川さんからメッセージをいただけますでしょうか。

小川 はい。同じ県内で、長野の方にお会いするのを楽しみにしていました。同じ地域に住んでいて、共通の部分で感じたりできる皆さんとお会いできたということを嬉しく思っています。本当にありがとうございました。  (拍手)

小川さんの話にも出た「里」の風景写真。小川さんは山梨の里に、もう1軒、野良小屋を建てた。長野の森の山小屋より標高が低いので、その分暖かいという。撮影:文春文庫部

星の王子さま (文春文庫 サ 9-1)

サン=テグジュペリ,倉橋 由美子

文藝春秋

2019年5月9日 発売

『星の王子さま』 *解説を小川糸さんが書かれています

最初から記事を読む 森への移住は決断の連続だった――作家・小川糸のとっておきの話