自民党の中でも右派と言われる高市早苗氏が総理大臣になり、参政党の掲げる「日本人ファースト」というスローガンが支持される日本社会では、急速に“右派”が増えているように感じられるかもしれない。
そういった傾向について、象徴的に取り上げられることが多い安倍元首相だが、“右派市民”たちは本当に安倍元首相を支持していたのだろうか。
中京大学で政治社会学を教えている松谷満さんは『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)の中で、2017年に1万1508人を対象に行われたアンケートの結果をもとに、“右派市民”を4つのタイプに分けて分析した。
(1)愛国主義者(政治家の靖国参拝や愛国教育に賛成している人)
(2)伝統主義者(同性婚や選択的夫婦別姓に強く反対している人)
(3)排外主義者(中国、韓国を嫌悪している人)
(4)反左主義者(立憲民主党、共産党といった左派政党を嫌悪している人)
ここでは、そういった“右派市民”たちが安倍元首相をどのように評価していたかについて分析した内容を、本書より抜粋して紹介する。気づかぬうちにはまり込んでいるかもしれない、バイアスの罠とは――。(全4回の2回目/最初から読む)
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「岩盤保守層」は本当に存在するのか
右派市民にとっての「シンボル」ともいえる安倍元首相に対する評価について検討しましょう。
今世紀における日本の代表的な右派政治家として真っ先に名前があがるのは間違いなく安倍です。1990年代半ば、初当選時から右派の歴史観にかかわる議員連盟に所属し、若手のホープと目されます。小泉政権時の北朝鮮拉致問題では内閣官房副長官として表舞台で主要な役割を果たし、広く世間にも認知されました。
その後、戦後最年少52歳の若さで小泉後の首相となりました。しかし、小泉政権のインパクトがあまりにも強かったためか、右派的な政策を性急に進めようとしたためか、ほかにもさまざまな要因が重なったことで、短命政権に終わります。
自民党総裁としての復権は2012年の民主党政権時でした。はじめは大きな期待もなかったような印象ですが、政権交代後はむしろ経済政策に注力し、盤石な長期政権を築き上げました。実に7年8か月という歴代最長の在任期間でした。後になって「レガシーがない」といった声も上がりましたが、右派が求めるような愛国主義的な教育を推進し、靖国神社にも参拝し、集団的自衛権の行使を可能にする安保法制を制定するなどしたのですから、右派にとっては替えのきかない傑出した政治家といえるでしょう。
