ドナルド・トランプ大統領などの右派政治家を指して「ポピュリスト」という言葉が使われることがある。「政治のエリート(プロ)よりも、普通の人の素朴な常識のほうが正しい。だから人々の素朴な常識に基づいた政治をすべきだ」といった考えをベースに人々を煽り、人気を得るのが「ポピュリスト」である。
ここでは、政治社会学の教授である松谷満さんによる『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)から一部を抜粋し、前名古屋市長の河村たかしを例にとり、ポピュリストを支持する人々の内心に迫る分析を紹介する。(全4回の3回目/最初から読む)
◆◆◆
検証:河村たかしの名古屋市政
抽象的な物言いではわかりにくいと思うので、具体的に、名古屋の河村たかし市政を事例として紹介します。
民主党所属の衆議院議員であったころから個性的な政治家としてテレビにも多く出演し、知名度があった河村は、2009年4月、名古屋市長に初当選を果たしました。市長となった河村は公約として掲げた「市民税減税」に取り組みます。この政策をめぐって市長と議会は激しく対立し、さらには公約になかった議員定数・報酬の半減案を提出したことでその亀裂はより深いものとなりました。
河村は市議会リコール運動を自ら率先して行うとともに、政党「減税日本」を立ち上げました。結果としてリコール運動は成功し、市議会解散の是非を問う住民投票が実施されることになりました。それだけではなく、同日の愛知県知事選には河村とタッグを組んで自民党の衆議院議員だった大村秀章が出馬し、あわせて市長を辞任した河村の出直し選挙も行われることになりました。広く注目を集めるという河村のねらいどおり、「トリプル」投票という舞台が整ったのです。
2011年2月に実施された投票の結果、河村が市長に再選、大村も知事に当選、住民投票の結果を受けて市議会は解散となります。同年3月に実施された出直し市議選では「減税日本」が第一党となり、河村は一気に自らの力と名声を高めることになりました。
