ドナルド・トランプ大統領などの右派政治家を指して「ポピュリスト」という言葉が使われることがある。「政治のエリート(プロ)よりも、普通の人の素朴な常識のほうが正しい。だから人々の素朴な常識に基づいた政治をすべきだ」といった考えをベースに人々を煽り、人気を得るのが「ポピュリスト」である。

 ここでは、政治社会学の教授である松谷満さんによる『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)から一部を抜粋し、さらに存在感を増すポピュリストたちの具体的な事例から、メディアやSNSでは少し誤解されているポピュリズムとの向き合い方までを紹介する。(全4回の4回目/最初から読む

ドナルド・トランプ ©文藝春秋

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石丸、斎藤、トランプ、欧州……拡散する新しいポピュリズム

 最後に、直近の事例、2024年から2025年にかけて起こったことにもあらためてふれておきましょう。

 2024年7月の東京都知事選では、当初は泡沫候補とも考えられていた石丸伸二が予想を大きく上回る160万票以上を獲得し、次点となりました。10月の衆院選では、「手取りを増やす」とのキャッチフレーズを掲げた玉木雄一郎率いる国民民主党が大きく票を伸ばし、21議席増となる28議席を獲得しました。そして11月の兵庫県知事選では、不祥事を起こして県議会が不信任決議を出した斎藤元彦知事がまさかの再選を果たしました。その際、NHK党の立花孝志が「二馬力」選挙と称して立候補し、実質的には斎藤の応援や批判勢力に対する攻撃を重ねたことも話題となりました。

 2025年7月の参院選では、大きな変化がありました。参政党の過激な主張に対する批判そのものが、同党の注目を集めることに寄与したのではないかといったことも指摘されています。この選挙には石丸も立花もかかわっていたのですが、ほとんど注目されることはありませんでした。人々からの注目や期待は持続的なものではなく、きわめて不安定で予測しがたいものだといえます。

 海外では、トランプがアメリカの大統領に返り咲きました。欧州議会選挙では、排外主義、ナショナリズムなどで共通する極右政党がドイツ、フランス、オーストリアなど各国で躍進しました。オランダでは一時、自由党が第一党になり、イギリスのリフォームUKが地方選挙などで躍進を続けています。これらヨーロッパの事例は、いずれも右寄りのポピュリスト政党と位置づけられています。

 こうして概観すると、ポピュリズムについて書いているそばから次々と新しい事例が生じ続け、常に現実に追い越されているような印象を受けます。将来を展望する前に事態が先に進んでしまっているのです。