ネットメディアがポピュリズムを加速させる
近年とくに注目を集めているのは、SNSを中心とするインターネットメディアの浸透が及ぼす影響です。ネットメディアとポピュリズムの相性はとてもよいと思います。既存のマスメディアは、あからさまに敵対的な感情を煽ったり、物事を過度に単純化したり、といったことに多少なりともためらいがあります。しかし、ネットメディアの発信者には、そうしたためらいがまったくない者も少なくないのです。
ネットメディアの影響力がきわめて強力であるという「認識」が広まった以上、あらゆる政党・政治家がこれを使いこなすようになるのは時間の問題でしょう。その場合、既成政党もまた有権者の感情を煽り、物事を過度に単純化して主張を訴えることになるのかもしれません。そうなると、アメリカで生じているような感情的な分極化(対立する党派の人たちに強い敵対感情を抱くようになること)が懸念されます。
また、誰もが合意するような単純なことがらがより重視されるようになる危険もあります。どういうことかというと、法律をどうするのがよいか、税や社会保障をどうするのがよいかを考えるには、さまざまな基礎知識が必要ですし、人々のあいだにも多様な意見があって簡単には正解を見つけられません。
それに比べて、やましいお金の使い道がないとか、愛想がいいとか、議会中に居眠りをしないとか、そうしたことは基礎知識がなくとも誰もが合意できるよい行いです。もちろん素行がいいのに越したことはないのですが、はるかに重要なのは前者の政策的なことがらです。にもかかわらず、後者だけが注目されるような社会は不幸でしょう。誰もが政治の情報にふれ、自ら発信もできるようになると、物事の優先順位がおかしくなってしまう危険があるのです。
もっとも、これはだいぶ衆愚的な見方であると思います。有権者をバカにしすぎだとお叱りを受けるかもしれません。それでもやはり、近年の動向をみるにつけ、そうしたことも言わずにはおれないのです。