自分の口で「もう二度とまわしはいらない」と言った大森少年が、それでも「また相撲がしたい」と戻ってきた。その言葉の持つ意味を、ゆきみさんはすぐに感じ取った。それは単なる気まぐれではなく、中学3年間の野球生活を経て確かめた、本物の覚悟だった。
高校・大学で磨かれたスピードとパワー
強い覚悟を胸に、大森選手が選んだのは高校相撲の名門・金沢学院大学附属高校だった。高校時代に2度の全国2位に輝き、大学では国民スポーツ大会で個人・団体の2冠を達成。そして昨年11月の全日本選手権では、アマチュアの強豪たちを次々と破って準優勝という輝かしい実績を残した。
7つの相撲部屋から勧誘が届くほどの選手に成長した背景には、金沢学院の環境が大きく影響していると春養さんは語る。
「あそこは、雰囲気的に下の学年でも上の先輩に親しく話しかけたりとか、アットホームな感じがしますよね。のびのびと、一人一人の個性を見極めて伸ばすような、そういう指導だったと思っています。あの子に向いていたと思います。高校・大学と一番いいところに行ったんじゃないかなって」
個性を尊重し、のびのびと力を伸ばす環境が、大森選手のスピードとパワーをさらに磨き上げた。小学校時代から染みついた「動き回る」スタイルは、大学レベルの稽古の中で洗練され、いよいよプロの世界でも通用する武器へと成長を遂げた。
「この子は強くなるな」――元小結・遠藤も育てた指導者の目に映ったもの
小学生時代の大森選手を指導した上野勝彦さんは、初めて大森選手を見たときの印象をこう語る。
「いいものを持って生まれたから、『この子は強くなるな』って思ったんですよね。スピードとか、足腰の良さがあって、教えればまだまだ強くなるなって」
上野さんは大森選手だけでなく、元小結・遠藤の北陣親方も幼少期から指導してきた。穴水町という同じ土地で育ったこの2人に共通するものを聞くと、上野さんは迷わずこう答えた。
「内に秘めたものは、共通するものがありますね。ふざけることはなかったですし、やるときは一生懸命やっていましたね」





