「一喜一憂しないところ」――プロの世界でも武器になるメンタル

髙立さんが大森選手の最大の強みとして挙げるのは、フィジカルだけではない。そのメンタルの強さだ。
「一喜一憂しないところ。負けても引きずらずに次っていうふうになるタイプだと思うので、幕下は7番しか取組がないですけど、関取になれば15日間で15番ありますので、負けても勝っても、気持ちの切り替えはすごく上手にしていくんじゃないかと見ています」
勝てば天にも昇る喜びを感じ、負ければどん底に落ちる。そういった感情の波に翻弄されることなく、淡々と次の一番に集中できる能力は、長い場所を戦い抜くうえで極めて重要だ。15日間という長丁場の本場所で、その切り替えの早さは際立った武器になる。

 

さらに髙立さんはこう続けた。
「少しまだ体は小さいですけど、力強さとスピード感が抜群だと思います。今からそこを磨いていけば、幕内上位でも相撲をとれる力は十分あると思うので、頑張ってもらいたいですね」
「幕内上位でも相撲をとれる力は十分ある」元十両力士の目に、大森選手はそれだけの可能性を持った存在として映っている。

「皆さんの記憶に残るような力士に」――両親が息子に託す思い

 

穴水町、そして能登への思いを背負い、大森選手は大相撲の世界へと旅立つ。その息子を、両親はどんな言葉で送り出したのか。

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春養さんはこう語った。
「ここぞという大一番で勝ち切る。勝負強くて、皆さんの記憶に残るような力士になってもらいたいです」
「皆さんの記憶に残るような力士」――その言葉には、単に強い力士になってほしいという以上の願いが込められている。土俵に立つ息子が、避難所でテレビを見ていた穴水の人々の記憶に、そして日本中のファンの記憶に深く刻まれる存在になってほしい。父の願いは、静かで、しかし深い。
母のゆきみさんは、言葉を選びながらこう言った。
「一歩ずつ前を向いて、ケガのないように頑張っていってほしいだけです」
ただ前を向いて、ケガなく。それが母親の、変わらない祈りだ。

 

5月の夏場所で能登の新星がデビューへ

大森泰弘選手は、おそらく5月の夏場所でデビューすることになる。
「目標は、横綱とやりあうことです」
能登半島地震の避難所で、テレビに映る力士に熱狂する町の人々を見た少年は、「いつか僕もこっち側になりたい」と誓った。その誓いを胸に、大相撲界の新しい舞台に立つ。

 

(石川テレビ)

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