代わりに使った肉は‥

 看板メニューのデンジャーステーキで使用する肉はヒレでもサーロインでもなく、ハンギングテンダーと言われる部位。最近だとサガリと呼ばれ、焼肉店などで目にする機会も増えましたが、当時はほとんど誰も使っていませんでした。

写真はイメージ ©getty

 買う人がいないから価格も安く、一般的なステーキに使う肉のほぼ半額! これを使えば唯一無二で、しかも稼げるお店になれる、という戦略があったのです。おそらく、みなさんの頭には「そんなに安くていい肉なら、なんで誰も使わないのか?」という疑問が浮かんでいると思います。それには明確な理由があるんです。

 ハンギングテンダーという部位は、筋と脂がびっしりとついているので、そのままではステーキとして提供できないんです。そのまま焼いただけでは、とてもじゃないけれど嚙み切れない。だから、いくら安くても誰も買おうとはしなかったんですね。

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 でも、その筋さえ取ってしまえば、とても柔らかくなることは知っていました。そんなこと、私以外にも知っている人はたくさんいたはずですが、それでも使おうとしなかったのは、筋を取り除くための手間が異様にかかるからです。

 筋を取り除くには機械が使えないので手作業になるのですが、これがとんでもない力が必要となってくる。1日分の量を仕込もうと考えたら、時間もかかります。外注で処理してもらうという手もありますが、かなりの費用がかさみますため、価格に上乗せすると普通のステーキ肉と変わらないコストになってしまう。

 だからこそ、誰もこの肉をステーキに使おうとしなかったんです。