私はプロレスラーでしたから、腕力には自信があったし、長時間の作業に耐えるだけの体力もあった。その力をすべて使って自分で下処理をすれば、安く仕入れた肉を上乗せコストなしで提供できる。これがどこよりも柔らかいステーキを、どこよりも安くご提供できる秘密なのです。

奇策をパクった店が「すぐつぶれた」理由

 これも商売をやっていく上での宿命ですが、ひとつのやり方がうまくいくと、すぐに業界内で評判が広まり「よしっ、ウチでもそれでやってみようじゃないか!」という店が続々と出てきます。

 類似店が出てきた時点でウチは「唯一無二」ではなくなってしまうわけですが、続々と誕生したデンジャーステーキの手法を真似た店は、結構なスピードで消えていきました。あんな小さな店でもできるんだから、ウチでも簡単に下処理できるだろうという甘い考えで参入した経営者さんたちは、私が空手家でプロレスラーであることをお忘れだったようです。

ADVERTISEMENT

 そういったバックボーンがある私だからこそ、なんとか独りでも肉をさばくことができたわけで、普通の料理人がやろうとしたら、間違いなく体を壊します。結果的にデンジャーステーキは唯一無二の座を守り続けてきたのですが、さすがに仕入れ値3倍という想定外の危機には呆然とするしかありませんでした。

最初から記事を読む 「牛肉を食べた人間がおかしくなる病気ではない」有名ステーキ店主が明かす「狂牛病」風評被害を招いた“ネーミングの怖さ”