銃で撃たれるような威力の落石
――水流のほかにも、渓谷探検では落石も恐ろしいと伺いました。
田中 落石は、怖いですね。僕らは渓谷の底、つまり狭くなっている崖の下をずっと歩いているので、どうしても上から何かが落ちてくる可能性があるんです。目の前の水面にポーンと石が落ちてくることは、しょっちゅうあります。
ほんの小さな石でも、はるか上空から落ちてくるとスピードがつきます。すると、ものすごい威力になります。
――ヘルメットなどを装備していても、防ぎきれない威力なのでしょうか。
田中 まるで銃で撃たれるような威力があるんです。台湾の渓谷には、平べったい石の真ん中に丸い穴が開いて、向こう側が覗けるようなドーナツ状の石が落ちています。「なんでこんな形の石があるのか?」と、最初は不思議に思っていたんです。
でもある時、僕の目の前でバーンと石が落ちてきて。その落ちたばかりの場所に行ったら、新鮮な「穴の開いた石」があったんです。つまり、平べったい石の真ん中を、上から降ってきた落石が打ち抜いていた。
――石が石を貫通するほどのスピードと破壊力……。
田中 その理由が分かった時はゾッとしましたね。もしこれが人に当たったら……と。石に穴を開けるぐらいだから、人間の体に当たったら間違いなく大けがです。
落石はリスクゼロにはできない「まるでロシアンルーレット」
――何か、対策はあるのでしょうか?
田中 落石を避ける術はありません。落ちてきて初めて気づくので。音もしないですし、突然水面にバーンと落ちてきて気づく。それこそロシアンルーレットみたいなものです。
水流の危険は、流れの読み方をより慎重に正確にすればある程度は防げますが、落石だけはどうしてもリスクゼロにはできない。
――落石の恐怖がつきまとう中で、夜はどうやって寝泊まりするのですか?
田中 そもそも一般的なキャニオニングは、日帰りで行うことが多いんです。でも、深くて険しい渓谷では、それができない。だから、野営道具や食料を持ち歩かなければなりません。
いざ、寝ようと平らな場所を探すけれど、入ってみたらまったくないことも多いんです。台湾のチャーカンシー渓谷では、夕方になってきて「もうそろそろ寝る場所を探さないといけないな」と思って周りを見渡しても、崖だらけで平らなところがない。
すると、両側の壁の間に丸い大きな石が挟まっている場所があったんです。下は渓谷の川が流れていて、空中に石が挟まっているような状態。落石があるかも知れませんでしたが、「もう寝られるところはそこしかない」ということで、その壁に挟まった石の上によじ登って寝ました。

