ロープを頼りに身ひとつで滝を下ったり、崖を登ったりするキャニオニングの技術を駆使し、世界中の渓谷を探検し続けている男性がいる。高知県大豊町に拠点を置く、渓谷探検家の田中彰さん(53)だ
2022年から2023年にかけて、ヒマラヤ奥地の“悪魔の谷”といわれる「セティ・ゴルジュ」に挑み、人類で初めて降り立った。その功績が評価され、2024年2月には、自然を舞台に活躍した探検家らに贈られる権威ある賞「植村直己冒険賞」を大西良治氏とともに受賞した。
常に死と隣り合わせの環境に身を置く田中さんの死生観や、「植村直己冒険賞」を受賞した時の心境、洞窟探検家のパートナーとの結婚生活などについて、語ってもらった。(全4回の4回目/1回目から読む)
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淡々と目の前の状況に対処していけば、怖くなる理由は減る
――常に死と隣り合わせの過酷な環境に対して、怖さはないんですか?
田中彰さん(以下、田中) 先が見えていないんで絶対的な自信みたいなのはないんですけど、自分が今まで培ってきたテクニックや知識で「こういう時にはこうしたらいい」みたいに対処する方法が分かっている時は、淡々と目の前の状況に対処していけばいいだけなんです。対処法がわかっていれば、怖くなる理由は少ないです。
――探検に向けて、用意周到に準備されるんですか?
田中 そりゃそうですよ。何の準備もなく行ったら確実に失敗しますからね。基本的にはもう準備、準備、準備して。石橋を叩いて渡るぐらいの感じですよ。
探検家の中にはリスクを取る人もいますが、それは極端な話、サイコロを振ったりロシアンルーレットをやっているようなものなんです。数をこなせばいつかは失敗する時が来る。
そうは見えないかもしれないけど、僕は死ぬ気はないので、できる限り確実な方法を取ります。リスクはなくしていきたいんです。

