マダガスカルで「木の上を移動する」という挑戦へ
――その後、大学3年生の時にアフリカのマダガスカルへ向かったそうですね。
田中 同期の仲間4人で「日本人が一番行ってない国はどこや?」と調べてマダガスカルに行くと決めました。でも現地で何をするか決めていなくて。
ある時、『ナショナル ジオグラフィック』という雑誌で、木の上に登ってキャノピー(樹木の枝や葉が密生し、森の上部を屋根のように覆っている部分)の生態調査をしている記事を見たんです。その時にふと、「熱帯雨林の木の上を、地面みたいに見立てて移動したら面白いんじゃないか?」と思いつきました。
思い立ったその足で、実際に木登り調査をしていた京都大学の先生に相談しに行ったら、探検部OBでした。その先生は親身に話を聞いてくれて、こう言われたんです。「木の上を自由に移動することは、月に行くより難しいよ。でも、チャレンジしてみたら?」と。
「宇宙に行ける時代に、人間はまだ木の上を自由に移動できないのか。それはすごい!」と思って、挑戦することにしました。
出発前のトレーニングは「洞窟の縦穴」と「キャンパスの木の上」で
――木の上での生活に向けて、どんな特訓をしたのですか。
田中 熱帯雨林の巨木は数十メートルもの高さがあります。とても手だけでは登れないから、ロープをかけて登る技術が必要です。ただ、日本にはそんな巨大な木はないので、洞窟の縦穴でロープの昇り降りの練習をしました。
京大の先生から「木の上で1ヶ月生活して、1キロ移動できればどこまででも行ける」とも言われていたので、ひたすら木の上で移動しながら寝泊まりする練習もしました。
例えば、京都大学の研究用の森や、関西大学のキャンパス内にある大きなクスノキの上で1週間くらい生活したり。
当時は大学も僕らの要望に柔軟で、「探検部の活動の一環で、木の上で生活したいんです」って言ったら、すんなりOKしてくれました。数ヶ月後には「俺たちは木登りのスペシャリストだな!」と胸を張れるくらいの状態に仕上げてから、現地のガイドや植物学者も含めた7人のチームでマダガスカルへ向かいました。

