合理的ではない「もう一つの攻撃の理由」

 これが私の最初の受けとめ方で、この状況にはある程度、「合理的に説明できる要素」があります。

 ただしもう一つ、合理的には説明できない「非合理的要素」があり、これは米国社会の内部崩壊と関係しています。一言で言えば、「暴力への衝動」です。これが現在の米国の外交政策を特徴づけている。

ピーター・ティール氏 Ⓒ文藝春秋

 言い換えれば、『西洋の敗北』で私が「ニヒリズム」と呼んだ「破壊衝動」です。米国のエリート層には、「暴力への衝動」「自己目的化した暴力」が確実に存在している。この「非合理的要素」を考慮せずには、現在の米国の振る舞いは理解できないのです。

ADVERTISEMENT

 もしかするとイランの体制が崩壊する可能性もありますが、トランプや米国のそもそもの狙いは、「体制転換」などにはないでしょう。どんな政権になっても、イランはナショナリズムの強い国家として、湾岸地域において米国や同盟国の脅威であり続けるからです。

 米国にとっての「合理的目的」を敢えて考えれば、「イランの分裂・内戦」を引き起こすことでしょう。そうなれば、イランは地域大国としての力を失い、国際政治の舞台からしばらく脇に置かれることになるからです。

 しかし、もしイランの現体制が崩壊しなければ――現時点では、その可能性の方が高い――さらに中国がイランに武器を供給して長期の消耗戦を支援すれば、「米国史上最大の戦略的大敗北」になる可能性があります。

 ティール 私はイランの問題について、現段階であまり断定的なことを言うのはためらっています。「まだ事態は進行中だ」という感じが強いからです。

ティール氏は高市首相を表敬訪問した Ⓒ時事通信社

 トッド教授の見方に同意する部分もあります。私自身の直感としては、こうした介入にはあまり賛成ではありません。そもそも米国がウクライナでの大きな戦争に関わるべきだったのかについても、やや懐疑的です。

※本記事の全文(約11500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年5月号に掲載されています(エマニュエル・トッド×ピーター・ティール「世界は終末を迎えているのか〈東京極秘対談〉」)。全文では、以下の内容について詳しく語られています。
・“統計学的例外”としてのティール氏
・「終末論的な歴史観」の起源
・『ワンピース』が描く“怖さ”とニヒリズム

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生

2026年5月号

2026年4月10日 発売

1300円(税込)

Amazonで購入する 目次を見る
次のページ 写真ページはこちら