ちょっと意外な「もっとも大事な道具」とは?

 私が考える、宇宙生活でもっとも大事な道具。それは、柄の長いスプーンです。スプーンをはじめとするカトラリー類も宇宙生活に欠かせないものですから、NASAから支給されるものが当然あります。NASAのロゴが刻印された立派なもので、持ち帰ればよい記念になります。ただ、私としては使い勝手にやや不満がありました。

 宇宙食については後ほどくわしくお話ししますが、宇宙食はアルミパウチに入っているものが多く、パウチにカトラリーを突っ込んで食べるのが基本スタイルです。支給されるスプーンやフォークは一般的な食事で使われるものと同じサイズなので、パウチに突っ込んで使うには柄がやや短く、指がたびたび汚れてしまうのです。

宇宙でラーメンを食べる野口さん

 非常にささいなことだと思われるかもしれません。実際、私以外の宇宙飛行士はあまり気にしていないようでした。そもそも、指が汚れたら拭けばいい話です。それでも、私は食事の快適性アップのために柄が長く、さらにパウチのすみにたまった食べものもすくいやすいようヘッド部分が小さめのスプーンを探し出し、貴重な私物枠を費やして宇宙へと持って行ったのです。

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 スプーンにはあらかじめ面ファスナーも貼り付けておきました。宇宙服や宇宙船内には、物品を固定するために、あらゆるところに面ファスナーが設置されています。スプーンに面ファスナーを貼り付けておけば、食事中にカトラリーから手を離したいときも宇宙服や壁などにさっと固定でき、非常に便利というわけです。

次の記事に続く 毎週金曜日は「ギュッと肩を寄せ合い…」「パクっと口で」野口聡一さんが明かす、宇宙飛行士たちの『数少ない娯楽事情』

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